筒井康隆「夜を走る」

夜を走る トラブル短篇集 (角川文庫)
筒井 康隆
角川書店
売り上げランキング: 262540

「経理課長の放送」トラブルだなぁ。
「悪魔の契約」この悪魔は「偽魔王」を連想させる。ラスト一行の気色悪さ。
「夜を走る」これがドタバタだ。
「竹取物語」SF的設定、竹取物語の筋立て、まさかの結末。
「腸はどこへいった」便はどこへいった、のほうが適切だろう。
「メンズ・マガジン一九七七」見事なドタバタ感。
「革命のふたつの夜」平行世界。解説を読んでわかった。ゲーム的設定だったらしい。
「巷談アポロ芸者」運動障害が発症してからのメチャクチャさがすごい。
「露出症文明」電話についてはわたしも同意見。著者は差別に対して常に意識的。
「人類よさらば」バカ科学者。
「旗色不鮮明」ありそう。こんなことを書くと、暗殺されてもおかしくないのでは? 脅迫状くらい届いたかもしれない。
「ウィークエンド・シャッフル」プロットが秀逸。
「タイム・マシン」タイム・パラドクスを論理的に解決している。
「わが名はイサミ」メタ歴史小説。言い訳が面白い。
スポンサーサイト

筒井康隆「残像に口紅を」

残像に口紅を (中公文庫)
筒井 康隆
中央公論社
売り上げランキング: 79895

世界から言葉が消えていく。
その言葉が表していたものも同時に消える。
世界が言葉に隷属しているのだ。
これは社会風刺だろうか?
このルールの下では当然に表現がどんどん不自由になっていく。
しかし、いくらか回りくどくなった印象はあるが、中盤を過ぎても違和感はない。
終盤にさしかかって、難解な表現が増えていき、そこからの崩壊は凄まじい。
第三章は残り二十一音から始まるが、一音消えていくごとに加速度的に不具合を生じていく。
回文か早口言葉のようだ。
それでも、作者の言葉の選択と読者の想像力はたいしたもので、最終的に前衛的な詩のようになっても、意味は理解できる。
そして作者の死と共に物語は終結する。
まるで人生ではないか。
テーマは喪失感かな。
早い段階で明らかとなるタイトルの意味がそれを象徴しているように思える。
これは面白いというよりすごい小説なのだ。
そういう意味では「ロートレック荘事件」
よりもすごいと思う。

三津田信三「厭魅の如き憑くもの」

厭魅の如き憑くもの (講談社文庫)
三津田 信三
講談社
売り上げランキング: 46633

私は探偵小説というものを読んだことはない(ここでの探偵小説の定義は、金田一耕介が出てきそうな小説、である。金田一はテレビで見たことがある。具体的には舞台は大正あるいは昭和、いわくある辺鄙な村、無闇におどろおどろしい描写、猟奇的な事件、変人探偵など)が、これはその探偵小説に当てはまる。
そういう意味で私にとって初めての探偵小説であるといえる。

本書の構造を記しておこう。
まず、「はじめに」と題された前書きに当たる箇所で、怪奇小説家の東城雅哉こと刀城言耶(ペンネームのほうが普通!)が体験した出来事を小説として描いたものであると明示される。
そして神々櫛村の簡易地図と登場人物表が挿まれ、本編「壱」が始まる。
各章は、何の題もつけられていない神の視点から描かれた部分、次に「紗霧の日記より」という題名通りの日記、続いて「取材ノートより」という東城の三人称視点による描写、最後に「漣三郎の記述録より」と題されたこれまた題名通りのパートの四つから構成される。
ミステリ的手法を用いたホラー描写が「壱」から「七(変換できない)」まで続き、「七」の最後に犯人に関する衝撃的な一文が置かれ、その後の「おわりに」において補足説明がなされる。
そしてもう一度ひっくり返し、曖昧に終わる。

メインアイディアのひとつは、東野圭吾「ある閉ざされた雪の山荘で」と同一。
アンチミステリと言っても良いのかもしれない。
推理が二転三転する様は見事。
伏線が細かく張ってあったようだが、どうにも長すぎて記憶できない。
非合理的な描写もリーダビリティを下げている。
しかしこれがないと成立しない作品なのでどうも難しい。
今のところこの著者の作品では光文社文庫の書下ろしシリーズがもっとも私に合っているようだ。
改めて思うが、私はフーダニットよりハウダニットのほうが好きらしい。
物理的に不可能に見える犯罪を可能だと証明し、それが犯人を指し示すという展開が私の中ではミステリの王道である。
密室についてそれが特に顕著。
それでも、総じて面白かった。
次作に期待しよう。

米澤穂信「秋期限定栗きんとん事件」

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)
米澤 穂信
東京創元社
売り上げランキング: 17685

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)
米澤 穂信
東京創元社
売り上げランキング: 42943

前作での破局からどうなるのかと思っていたら、それぞれが別ルートをたどって再び合流した。
今回は連続放火事件。
新聞部員の瓜野は友人と共に調査を始める。
一方、小鳩は恋人の出現に始まり、冬になってようやく事件に参戦する。
どちらの視点からも小山内が犯人ではないかと示唆されるが、そこは当然レッドへリングである(四部作であることを利用して裏をかくのもありだったかもしれない)。
結局事件そのものは法則性に関する逆転の発想がメインで、犯人はああそうだろうなという感じで意外性はあまりない。
最大の謎は小山内の奇妙な言動なのだが、その謎解きは最後の一行まで引っ張られる。
毎回このクオリティを維持していることがすばらしい。

麻耶雄嵩「メルカトルと美袋のための殺人」

メルカトルと美袋のための殺人 (集英社文庫)
麻耶 雄嵩
集英社 (2011-08-19)
売り上げランキング: 90613

やっと手に入れた。それほど古くもなく、評価の高い作家の評価の高い作品集なのに、なぜ絶版なのだろう? 出版業界の不合理である。
「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」矛盾の原因が華麗に明かされるカタルシスは抜群。島田のにおい。
「化粧した男の冒険」タイトルの意味が不明。どこが冒険なのか。トリックも地味。これを派手にやると「バイバイ・エンジェル」になる。要するに見せ方の問題だ。犯人特定の展開とラストの一捻りはなかなか。
「小人閒居為不善」暇つぶしに犯罪を誘発する長編には向かない銘探偵。だから出てきたとたんに死んだのだ。
「水難」幽霊の存在は謎ではなかったようだ。アンフェアな気がする。
「ノスタルジア」屁理屈によるフェアプレイ。重厚長大な長編でやられたら立腹ものだろう。
「彷徨える美袋」善意囮小説家と背信的悪意銘探偵。
「シベリア急行西へ」いたって普通だった。「翼ある闇」へのプロローグ的な一編。

検索フォーム
Amazon
最新記事
リンク
カウンター
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
RSSリンクの表示
QRコード
QR