霧舎巧「名探偵はもういない」

名探偵はもういない (講談社文庫)
霧舎 巧
講談社
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作者の指示通り、登場人物表を作ってみる。
一応年代も記録しておく。昭和五十三(1978)年三月。

木岬研吾・・・犯罪研究者、元ライター?→元警察官
敬二・・・研吾の義弟、小学四年生、犯罪者に憧れている
栃木県警刑事×2
鈴影さゆみ・・・ペンションすずかけオーナー、五年前のバス事故の遺族
東観寺大善・・・従業員、元神父
福永・・・従業員、知能に問題あり
琴沢里子・・・宿泊客、恐喝者
リチャード・クインシー・・・宿泊客、謎の外国人、切手マニア、警視
後動有三・・・宿泊客、英語を話す、警視庁捜査一課刑事
エリオット・クインシー・・・リチャードの息子、エラリー・クイーン?
笹後安奈、甘奈・・・双子、警察官
早芝・・・ライター
木岬詩織・・・木岬研吾の妻、敬二の姉

だいたいこんなところだろう。ていうか、飽きた。
冒頭から意味ありげな描写が続くが、面白くも何ともない恋愛小説が登場人物の紹介と平行して進み、半分くらいまで事件が起こらない。
やっと起きた事件は普通の殺人で、もうひとつは事故や自殺かもしれない。
その頃、エラリー・クイーンが登場し、名探偵として八面六臂の活躍を見せる。
登場人物表を自分で作れという趣向はこのためだったのかと思ったが、結果的に間違いではなかったにしろ、この時点ではまだその奥の意味に気づいてなかった。
この手の話はどうしてもややこしくなるのがいただけない。
まあ、こうでもしない限り、勝手な読者は簡単すぎて面白くないとか言うのだろう。
やはり単純明快で衝撃度抜群な「占星術」や「斜め屋敷」のようなトリックはもう残されていないのだろうか。
結局、この作品は開かずの扉研究会シリーズの前日譚という位置づけになるらしい。
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J・D・カー「火刑法廷」

火刑法廷[新訳版] (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ジョン・ディクスン・カー
早川書房
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謎は大きく二つ。
マイルズの死に関する謎とその死体消失の謎である。
他殺なのか病死なのか?
他殺なら死の直前、密室状況下で被害者と一緒にいた女性は何者なのか?
彼女が存在しないはずのドアの向こうに消えたとはどういうことか?
マリー・ドーブリーは魔女なのか?
これらの謎は一度はゴーダン・クロスによって合理的に解かれるが、犯人を有罪にするに足る決定的な証拠はなく、彼は結果的に自らの死によって犯人を糾弾する。

ここで物語が閉じれば普通のミステリであり、推理の論理性やそれによって導かれる意外な犯人や真相は傑作本格ミステリと評されるのに十分だが、エピローグにおいて衝撃的な告白がなされ、別のジャンルに様変わりする。
それに伴って、事件の様相も変化するはずだが、その点につき詳細な説明はないまま終局を迎える。

感想;文体のおかげで何がどうなったのか、いまいち理解できていない。そのため、エピローグの効果もいまいちだった(結局、あれは誰なのか? 素直に読めばマリーということになるが……)。
それでも、マリーに関してスティーブンズが抱く不安によるサスペンスは非常にエキサイティングだった。

よくわからなかったのでWikipediaで調べてみると、二通りの解釈が可能らしい。
もし純然たる本格ミステリとして読むのなら、エピローグはマリーの妄想で、ホラーとして読めば、その部分は真実ということになる。
確かによくできている。

小林泰三「肉食屋敷」

肉食屋敷 (角川ホラー文庫)
小林 泰三
角川書店
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表題作。マッドサイエンティストが恐竜と間違えて宇宙人を再生してしまう話。ホラーオチ。
「ジャンク」人間を機械の材料とする世界。ハンターとハンター・キラーの戦い。この設定を利用した捻りが効いている。
「妻への三通の告白」二通目から捩れが顕著になる。三通目で種明かし。自分だけの世界を作ってしまった人の話。
「獣の記憶」自分の中に潜む別の人格「敵対者」に悩まされる主人公の独白。精神科医らしき女性の証言。このふたつのパートによるカットバックで物語は展開する。まず、第一のどんでん返しは、主人公は多重人格ではなく、暗示によってそう思い込まされていたということ。第二のどんでん返しは、「敵対者」は女性だったということ。第三のどんでん返しは、その女性が例の精神科医だったということ。第四のどんでん返しは、それは彼女の思い込みだったということ。そして、最後のどんでん返しは、探偵=犯人という事実で、それはつまり、常識的にはマッチポンプである。これが多重人格ということで上手く説明されている。
この質の短編にどれも捻りを入れて、しかも量産しているのである。作者はすごい。

北村薫「空飛ぶ馬」

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)
北村 薫
東京創元社
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「織部の霊」論理的ではあるが説得力はどうだろうか。本人が納得しているということは作中では完成しているらしいが、読者としてはいまいち納得できない。
「砂糖合戦」人間の悪意を描いた一編。展開はご都合主義に見えるが論理はスマート。
「胡桃の中の鳥」よくわからない。捨て子の話ということだけはわかるが、なんだろう? このモヤモヤ感は。
「赤頭巾」島田荘司的。無闇に黒い真相。
「空飛ぶ馬」ハッピー・バースデイな話。伏線が巧みである。
いろんな情報が円紫さんに収束し、一瞬で整理される。この手の名探偵は多い。エキサイティングではないところがわたしには合わない。

藤咲淳一「攻殻機動隊 眠り男の棺」

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 眠り男の棺 (徳間デュアル文庫)
藤咲 淳一
徳間書店
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新浜では「吸血鬼事件」と呼ばれる殺人事件が連続して発生していた。自らの愛する者に噛みつかれ、電脳死させられるという凄惨な事件であった。
草薙は吸血鬼ウイルスに感染した少女に襲われる。彼女の電脳からは記憶が消され、すずらん南商店街と思われる場所の風景と、伊田蔵元代議士に対する殺意だけが残されていた。
一見無関係に見えた被害者は三年前の「希望号事件」の関係者だったことが明らかになり、草薙は伊田蔵と接触する。
そこから浮かび上がった容疑者は平良城ロイ。二重スパイの疑惑をかけられ、行方不明になったマイクロマシンの研究者だった。吸血鬼ウイルスを開発したのは彼である。それは人間の感情をコントロールするウイルスだった。愛情を憎悪へ。
草薙はウイルスの中にあった記憶をたどって、荒廃した東京に単独潜入し、そこでイガラシという男と出会う。
タナカとササジマがここで再登場。
草薙は王兵という名の謎の中国人と会談する。その直後、二人組による襲撃を受けるが、撃退。彼らは外事六課の構成員だった。彼らがなぜ王兵を監視しているのか? 王兵のところに戻り、詰問するが、彼ははぐらかす。
草薙はネットワーク・ログが記録された端末を受け取り、宿でそれを調べる。壊滅する直前の東京がそこにあった。平良城に関する情報を少しだけ得て、電脳世界から戻ってくると、光が失われていた。
そして王兵の用心棒である抱石による襲撃を受ける。それをなんとかやり過ごし、草薙は王兵に再び事情を聞くべく、視力を失ったまま、記憶を頼りに王兵のマンションへ向かう。その途中で、おそらく外事六課に襲撃され、偶然身を隠したところがイガラシの家だった。
そこから、草薙はイガラシに眼を借り、王兵のマンションへ向かうが、そこはすでに外事六課によって包囲されていた。草薙はイガラシたちの助けを借りて、マンションに潜入を試みるが、王兵と抱石には逃走されてしまう。しかし、草薙は発信機を抱石につけることに成功し、それで行動を追跡すると、抱石は抗中派のアジトに入った。
そこは元杉並区役所で、ひとつの要塞と化しているため、進入は容易ではない。イガラシの提案により、地下鉄から進入することになった。草薙は警備システムを掌握し、王兵に接近する。
しかし、外事六課の参入で、場は混乱する。そして、草薙対抱石の戦い。バトーとタチコマの援護があって草薙は抱石を倒す。そこで明らかになるのは、王兵とイガラシは同一人物であり、平良城ロイでもあるという電脳・義体トリック。
すべては平良城の復讐であり、邪魔な抗中派と外事六課を消そうとした企みであった。
あらすじはこんなところだ。
冒頭はがっつり刑事もので、草薙の東京潜入後、特に眼が見えなくなってからが非常にスリリング。
サスペンスってこれだなと思う。
さりげなくタナカが大活躍。
時系列では、おそらく九課再結成直後。

藤咲淳一「攻殻機動隊 凍える機械」

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 凍える機械 (徳間デュアル文庫)
藤咲 淳一
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「魔弾の射手」コント的展開から始まり、狙撃犯のタナカを九課はおびき寄せる。これは映像化は難しいだろう。できないことはない。まさかの実はすごい人。
「タチコマの恋」タイトルそのままの内容。もしかしたら、あのラストは次への伏線か?
「凍える機械」予想通り、連作形式だった。しっかり勧善懲悪になっているところがよろしい。

谷川流「涼宮ハルヒの憤慨」

涼宮ハルヒの憤慨 (角川スニーカー文庫)
谷川 流
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長い。
中篇二つというのはどうだろう。
私としては三十ページくらいの短編が十話くらいあることを望む。

「編集~」はストーリー展開は普通だが、作中作が妙に面白い。
「ワンダリング~」は風呂敷を広げるだけ広げておいて、あとはお好きにどうぞ、という感じ。嫌いじゃない。

北山猛邦「『アリス・ミラー』城殺人事件」

『アリス・ミラー城』殺人事件 (講談社文庫)
北山 猛邦
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いきなりネタバレ注意!

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森博嗣「少し変わった子あります」

少し変わった子あります (文春文庫)
森 博嗣
文藝春秋
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これは哲学書だ。
舞台設定は幻想的だが、そこで語られる内容は現実的に過ぎる。
文学とはそもそも恥ずかしいものなのだ、と知ったような口を利いてみる。
食事と人間関係。
最終話では一応叙述トリックが仕掛けてあるような気配なのだが、なぜ主人公が行方不明になるのかは明らかにされない。
消えたのかそれとも消されたのか。
どちらでもいいけれど。
川端康成っぽいのはきっと視線のせいだろう。
あとは登場する女性の性質かも。

谷川流「涼宮ハルヒの陰謀」

涼宮ハルヒの陰謀 (角川スニーカー文庫)
谷川 流
角川書店
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まず一言。
なぜこんなに長いんだ?
内容的には半分の長さでも十分だと思う。

中身はさらにカオスなシチュエーションになってきている。
「消失」から感じていたが、この世界の時間というか歴史というか、それは基本的に決定論的に積み上げられたものらしい。
タイム・パラドクスはいくら考えても起こり得ないのである。

かく言う私は運命なんて陳腐なものは信じていないが、未来はすでに決まっていて何をしようと変えることはできないと考えている。
未来は完全に予測可能であるという考えだ。
その技術さえあればの話だが。
神はサイコロを振らないし、きっと全知全能でもない。
そもそもいるかどうかさえ怪しいし、いたとしても人間なんかに興味はないだろう。

たとえば、わたしがこの先ものすごくひどい目に遭うと未来人か何かが教えてくれたとする。
すると当然に最悪の結果を避けようとするはずだ。
しかし結果として回避行動は失敗する。
すべては織り込み済みなのである。
何かの裏を掻こうとしても無駄だ。
それすらはじめから決まっている。
カオス理論の入り込む余地もない。
初期条件は変動しないからだ。

谷川流「涼宮ハルヒの動揺」

涼宮ハルヒの動揺 (角川スニーカー文庫)
谷川 流
角川書店
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面白いのだけれど、全体的に小粒でインパクトに欠ける。
キャラ小説としては優秀。

谷川流「涼宮ハルヒの暴走」

涼宮ハルヒの暴走 (角川スニーカー文庫)
谷川 流
角川書店
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「雪山症候群」を楽しみにしていたのだが、期待していたのと違った。
「孤島~」みたいにがっつりミステリしてるのかと思ったのに。

島田荘司「摩天楼の怪人」

摩天楼の怪人 (創元推理文庫)
島田 荘司
東京創元社
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もう冒頭から壮大な謎のオンパレード。
大女優の死に際の告白からすべては始まる。
まずは1921年の一連の事件。
メインはサリナスがジークフリートをいかにして殺害することが可能だったか?
そして臨終の瞬間、絶壁の窓に半透明の骸骨が目撃される。
原因不明の窓ガラス崩壊。
そしてこの分厚さ。
八割がたマンハッタンの歴史の物語だ。
事件はおまけなのかも。
犯人はマスクの怪人という狙いすました設定。
21歳でコロンビア大助教授。
あれ?
御手洗って京大に在籍してなかったか?
動物実験が嫌でやめたというエピソードがあったような。
この頃の御手洗の関心は発生生物学なる学問分野にあったらしい。
この数年後、何がどうして、占い師に身を落とすのか?
その辺りのエピソードも読みたい。

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