三津田信三「四隅の魔」

四隅の魔  死相学探偵2 (角川ホラー文庫)
三津田 信三
角川グループパブリッシング
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怪異があることが前提の世界観なので、合理的な推理をしなければならない必然性がない。
いざとなれば全部幽霊のせいにできるのである。
推理小説として難があるように思う。
ミステリーとしては意外な結末としっかりと張られた伏線を評価できる。
シリーズとしての伏線が目立つのが気になった。
ハリー・ポッターみたい(途中までしか読んでないし、完全にうろ覚えだけど)。
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道尾秀介「片眼の猿」

片眼の猿―One-eyed monkeys (新潮文庫)
道尾 秀介
新潮社
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読みやすい。
やはりこれは面白い小説の必要条件である。
そしてあからさまに違和感のある描写。
何かあると思わせ、それを上回る真相が用意されている。
終盤の謎解きというかネタバラシというか、あれは見事だった。
欲を言うならもう少しセンセーショナルな事件を扱えば間違いなくもっと面白くなるだろう。わたしにとって。
どうでもいいことをおどろおどろしく描き、重要なポイントは簡単に済ませるという、非常に簡単なミスリーディングの手法である。

犯人当てアンソロジー「気分は名探偵」

気分は名探偵―犯人当てアンソロジー (徳間文庫)
我孫子 武丸 霧舎 巧 貫井 徳郎 麻耶 雄高 法月 綸太郎 有栖川 有栖
徳間書店
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犯人当てということなので解決編の前に推理してみようと思う。

有栖川有栖「ガラスの檻の殺人」
出入口が監視下にある四辻での殺人。犯人候補はかなり絞られているが、問題は凶器がどこに消えたのかという点である。刃渡り十センチほどの細身の何か。これを見つけることができれば犯人に結びつくはすだ。ひとつ思いついた。ラーメン屋のスープに使われる鶏がらか豚骨。ばかばかしいな。第一、それらしい描写がない。もうひとつ。タバコ屋が犯人だと仮定すると凶器が何かはわからないが、ある隠し場所が浮かび上がる。それは自動販売機の中だ。煙草の自動販売機の存在と鍵をたくさん持っているという情報がそれを裏付ける。さらに動機は彼は沙耶のファンだから、つきまとう被害者に天誅を下したとも考えられる。解答終わり。
答え合わせ。ほぼ正解。それにしても弱い。弱すぎる。ただのパズル、いやそれ以下だな、これは。論理がない。

貫井徳郎「蝶番の問題」
手記から犯人を推理する。不自然な点;手記の執筆者の名前が一度も出てこない。蝶番にサラダ油が塗られていることがなぜ犯人を示唆するのか理由がわからない。ていうか、これのどこに犯人の特定に繋がる情報があるのだろうか? 別荘を予約した人物が犯人だとすると、先頭を歩いていたということと、劇団のリーダーだったということから恭平が筆頭候補となる。しかし、彼は最初に死んでいる。ここで発想の転換を図ってみよう。これが手記ではないとしたらどうか? 芝居の脚本だという可能性だ。だとすると、経過が真っ白になるだけで犯人の特定はさらに難しくなる。いや、六人目が存在した可能性が出てくるのか。ということで見当がつかないので諦める。正答率も1%とのことなので、しかたない。
答えを見て、手記を読み込めていなかったと思った。まさか、だ。そこからさらにひっくり返すとは。まあ、あとのほうはなくてもいいけど。

麻耶雄嵩「二つの凶器」
方向性としては間違っていなかった。被害者の立ち位置を変えればなぜ無警戒に殺されたのかはすぐに謎でなくなる。しかし、そこからだ。わたしは犯人を特定することはできなかった。右手にも気づいていた。時間がどこかでずれていることも気づいた。しかし、誰が嘘をついているのかとなると、推理が進まない。結局、敗北。要するに、わたしはこの手の「論理的」思考が致命的に苦手なのだ。この事実を再確認しただけだった。

霧舎巧「十五分間の出来事」
推理するのも面倒になった。結局凶器はなんだったのかという問題に終始するので、警察さえ来ればたちまち解決だろう。

我孫子武丸「漂流者」
これはなかなかいい。確かに、男性が三人だということは気がついた。しかし、それを無視していた。どちらかといえば記述者が女性であることを検討していたような気がする。

法月綸太郎「ヒュドラ第十の首」
犯人を一度消す。そして候補の外にそれを求めるという、意外性の演出としてはベタな手段。謎自体は非常に単純で、解答も鮮やかだ。

西澤保彦「ファンタズム」

ファンタズム (講談社文庫)
西澤 保彦
講談社
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これは問題作だな。
度量の狭い読者は激怒することだろう。
ちなみにわたしは比較的懐の深い人間なので楽しめた。
まず犯人が登場し、倒叙ものらしいとわかる。
読み進めていくうちに、読者に提示される謎は犯行の方法と動機だと予想されるが、動機というよりも犯行の規則性については、美に基づく意外な展開が用意されていて、ミステリとして解決される。
しかし、密室の問題は本格ミステリとしては反則的な方法でぶん投げられる。
そしてある意味きれいな結末。
つまりこれはミステリとしては異端だが、幻想ホラーとしては普通の作品なのだ。
それを終盤まで隠しているところが確信犯的ルール違反なのである。

沼正三「家畜人ヤプー 第1巻」

家畜人ヤプー〈第1巻〉 (幻冬舎アウトロー文庫)
沼 正三
幻冬舎
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物語の本筋に適宜脚注と説明のためだけの描写があって、非常に親切な構造になっている。
小説+設定資料ということである。
発端はタイムマシンが故障して20世紀に来たポーリーンが裸の麟一郎と乗馬服に身を包んだクララを見て、そこが彼女にとっての現代だと勘違いしたところから始まる。
いろいろあって未来へ行くのだが、そこで……。
未来では、白人=人間、黒人=半人間、黄色人(日本人だけらしい。他のモンゴリアンは絶滅しているが、人間扱いのようだ)=ヤプー、という階層社会になっており、その中でも特にヤプーは人間ではないから、完全に道具として扱われている。SFでありSMである。
ただの変態小説として読んでも十分すごいし、書かれた時代を考慮して哲学書、あるいは純文学として当時の日本人を描いたものとして読めばさらにすごい。
沼正三は誰なのかという謎もあるようだが、そんなことはどうでもいい。

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