法月綸太郎「法月綸太郎の功績」

法月綸太郎の功績 (講談社文庫)
法月 綸太郎
講談社
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「イコールYの悲劇」これを論理的とするのが本格ミステリなのだろう。ダイイングメッセージがどうこうというのは傍論に過ぎず、殺害の状況と登場人物から犯人は自ずと絞られてくる。つまり、翠である。しかし、彼女の単独犯だとするとどうも上手く考えが進まない。結局夫との共犯だった。この残念な真相をごまかすかのようなサイコな幕切れ。
「中国蝸牛の謎」ふーん。トリックは実にお粗末だ。読者視点からだとメタフィクションなのかもしれない。
「都市伝説パズル」比較的シンプルなプロット。トリックは僕にしては珍しく見破ることができた。推理小説らしく仮説が出ては消され、それが長ったらしく感じた。三十ページだったら最高だな。
「ABCD包囲網」さり気に傑作なのではないか? 明らかに虚偽だとわかる自白を繰り返す男の意図は何なのかという謎を巡って物語は展開される。起承転結をテーマに意外な結末が……。長編だったらアンフェアだな。
「縊心伝心」以心伝心でもなんでもない。犯人は見当が付く。問題はどこからそれを証明するかなのだが、ホットカーペットとは。
全体としてかなり読みやすくなっていた。これまで読んだ法月作品の中では一番読みやすい。
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道尾秀介「骸の爪」

骸の爪 (幻冬舎文庫)
骸の爪 (幻冬舎文庫)
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道尾 秀介
幻冬舎
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最初はなんだか読みにくかった。
文体は一人称で柔らかいのだが、ムダとしか思えない描写が延々と続くのだ。
これは相性が悪いなと思って流し読みモードに移行する。
すると中盤辺りから俄然盛り上がってきてあとは最後まで一気読み。
解説まで読み終えたのは午前四時過ぎだった。
バツ2は謎でもなんでもなくその場で理解した。多重人格探偵サイコである。
死体消失の謎は最後までわからなかった。
そこら中に伏線が張り巡らされていて、結局端正な本格ミステリだった。
前作のホラーオチがあっただけに予想を見事に裏切られた形である。
いたるところに偶然が作用した不思議な事件だった。おしまい……となるのかと思いきや、発端にあの人物のいたずらがあったとさ。
おまけで、卍と鉤十字。

山田正紀「螺旋」

螺旋(スパイラル) (幻冬舎文庫)
山田 正紀
幻冬舎
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トンデモ系。
螺旋のモチーフと聖書や古事記の引用。
事件は大きく三つ。
ひとつ、下水処理施設で見つかった死体、彼の宿泊する部屋は火事になっていた。死亡推定時刻と火災発生時刻の奇妙なずれ。
ふたつ、隠居した精神病理学の権威の謎の死。自殺か他殺か。
みっつ、田舎の豪腕の死体が豪雨の中、ダムに捨てられる。しかし、全長六・五キロメートルの密室でそれが消失してしまう。
これを読んで感じた印象は解説で詳しく書いてあった。他の山田ミステリについても同様の感じがある。
今回は長いせいか、前作「妖鳥」より衝撃度は薄かった。
どの事件も思い込みがその中心にある。
こういう盲点の衝き方はありだが、ずるいと感じた。
まあ、面白ければ何でもいい。

米澤穂信「ボトルネック」

ボトルネック (新潮文庫)
米澤 穂信
新潮社
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一見すると、とても本格ミステリとは思えない。
本格としてのガジェットが見当たらないからだ。SFのラノベって感じ。
この著者の作品を読んでいてたびたび思ったことが、ひとつ明確になった。
日常の謎は、それはそれで面白いものなのだが、謎が謎であるとこちらが気づく前に解決してしまうのだ。
逆に言えば、答えを示されてから、ああ、あれが謎だったのねって気づかされる。
この中でもっともミステリっぽい、事故死の矛盾点の指摘は、お粗末トリックで少し残念だった。
となると、驚きどころといえば、タイトルにもなっている「ボトルネック」の意味なのだが、これは痛い。
けれど、それ自体は最初から明らかなわけで、終盤で主人公が気づいても、遅えよ、とつっこみたくなるだけだ。
しかし、評価すべきはこんなところではない。
登場場面の少ないフミカの人物造詣だ。
この黒さはたぶんこういう描き方でないと表現できないだろう。
なぜそうなるのか説明を放棄しているところがすばらしい。
そこを描いてプラス50ページなら駄作だと感じただろう。
そして結びは、見事な切れ味のメール一文。
救えない感じがすばらしかった。

クリスチアナ・ブランド「招かれざる客たちのビュッフェ」

招かれざる客たちのビュッフェ (創元推理文庫)
クリスチアナ・ブランド
東京創元社
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「事件のあとに」逆転に次ぐ逆転。倒叙物として捻りが利いていた。
「血兄弟」プロットが錯綜していて難しい。要するに互いが互いを罪に陥れようとしたということだろうか。警部は事件を解決するが、誤解したまま。
「婚姻飛翔」この長さでひっくり返しすぎだ。事件の発端から調査を細かく描けば大長編にできるポテンシャルがある。真犯人の人物像が素敵だ。そういえば刑法の講義で似たような話があった。
「カップの中の毒」人間が描けているとはこういうことか。倒叙形式で、最後の一行が秀逸。
「ジェミニー・クリケット事件」舞台はどこかの大きな庭。老人と若者が実際に起きた殺人事件の推理ゲームを行う。多くの推理が披露されて、最後に意外な真相が語られ、さらに老人の正体が仄めかされる。以前読んだバージョンとは結末が異なるらしいが、どこが違うのか記憶していないのでわからなかった。あいにく、テキストが手元にないので確認できない(追記―老人の正体を仄めかすか、客観的に明らかにするかが大きな違いらしい)。
「スケープゴート」タイトルの通り、生贄がたくさん登場。
「もう山査子摘みもおしまい」どういうこと? 作中の情報からでは冤罪であるということしか明らかにならない。真犯人は仄めかされるのみ。でもまあ、人物を描くという小説らしい小説だ。
「スコットランドの姪」パズラーではないが、こういうのを読むと本格だなぁと思う。
「ジャケット」ジャケットの伏線が効いていた。おまぬけクライムストーリーですね。
「メリーゴーラウンド」見事な連鎖反応。
「目撃」ばかばかしいトリック。人物配置が上手いのかな。
「バルコニーからの眺め」オチは簡単だが、実は他にもっと深いオチがあるのではないかという印象が残った。
「この家に祝福あれ」気違いの描写のリアリティ。老婆の過去は伏線っぽかったのだが?
「ごくふつうの男」わからない。ミステリーでもないし、そんなにブラックでもない。ただの正当防衛譚。
「囁き」囁き。その原因となった驚愕の過去。
「神の御業」これはすごい。娘と孫が轢き殺される場面を目撃した警官が、加害者に有利な証言をした。事件は事故として処理されたが、今度はその警官が加害者を轢き殺した。どちらにも第三者が目撃しており、証言によれば事故としか考えられない。人物の役割が変わっただけであった。人々は「運命」とか「神の御業」とか言った。しかし、実は驚愕の真相が……。「HowよりもWhyだ」というのがよくわかる傑作。
いやー、それにしても、クリスチアナというくらいだから当然女性なのだが、女流作家の文章という感じがまったくしなかった。嫌に黒いのもそれを後押ししている。
どれも一捻りも二捻りもしてあって、訳もそこそこ易しく、総じて良かった。

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