小川一水「時砂の王」

時砂の王 (ハヤカワ文庫JA)
小川 一水
早川書房
売り上げランキング: 6998

すごいな。
歴史改変戦争が物語の軸で、卑弥呼の視点から最終防衛線の戦いを、オーヴィルの視点でそこへ至るまでの経緯をカットバック手法を用いて描く。
サヤカがとても魅力的。
卑弥呼はやっぱり卑弥呼。
時間の解釈もアレキサンドルの紡ぐ童話の形でわかりやすく語られる。
卑弥呼パートのリーダビリティが下がるのは仕方ない。
その雰囲気も含めて、ということだ。
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小林泰三「脳髄工場」

脳髄工場 (角川ホラー文庫)
小林 泰三
角川書店
売り上げランキング: 34303

「脳髄工場」自由意志なんてない。すべては最初から決まっている。
「友達」サイコだな。
「停留所まで」第三者が主人公。
「同窓会」これも逆転。
「影の国」よくわからなかった。
「声」時間もののある意味王道的な話。
「C市」クトゥルー系。
「アルデバランから来た男」仮想現実ネタ。
「綺麗な子」快適さの追求の果てに待つ終焉。
「写真」ミステリ。シンプルな逆転。
「タルトはいかが?」サイコな話で締め。

貫井徳郎「神のふたつの貌」

神のふたつの貌 (文春文庫)
貫井 徳郎
文藝春秋
売り上げランキング: 146834

叙述トリックは不発。
テーマが神の沈黙というだけあって、世俗的な事件について謎はない。
しかし肝であるところの観念的な話は理解できなかった。
なぜこの世は不幸に満ちているのか。神はいるのか。

北村薫編「謎のギャラリー 謎の部屋」

謎のギャラリー―謎の部屋 (新潮文庫)

新潮社
売り上げランキング: 362799

「大人の絵本」まったくわからなかった。どことなくシュール。
「桃」冬場の桃という幼少期の矛盾する記憶がテーマで、その矛盾を解決しようとするプロットはミステリっぽいが結局結論は出ず。あやふやな記憶から様々なことが仄めかされ、そこはかとなく淫靡であるという印象だけが残るという意味ではとても印象的な話。
「俄あれ」これはわかるといえばわかるしわからないといえばわからない。人妻の誘惑? 的な話。どうとでも取れる言葉をどう受け取るべきなのか。理性と煩悩の戦い。夏の夕立によるひとときの非日常から日常への回帰。
「遊びの時間は終わらない」ドタバタ。妙なリアリティがある。
「絶壁」わからない。
「領土」わからない。
「賢い王/柘榴/諸王朝」シニカル。
「豚の島の女王」とても読みやすかった。綺麗にまとまっている。
「どなた?」で? って感じ。ユーモアなのか。
「定期巡視」忠犬トペクってことか。
「埃だらけの抽斗」盗んだ金を返すというある意味正しい行為がかなり黒い。
「猫じゃ猫じゃ」条件反射オチ。展開が冗長。
「指輪/黒いハンカチ」スマートだがガチガチの本格ではなかった。
「エリナーの肖像」暗号もの。ダイイングメッセージでもあった。しかしこの手の暗示的な謎は解くのが名探偵でないと、頭おかしいんじゃないかという疑問が頭をもたげてしまうように思う。
「返済されなかった一日」時間を貸すというありえない出来事を現実的に処理し、オチまで現実的。これくらいならわかる。
「私のノアの箱舟」わからないなぁ。

沼正三「家畜人ヤプー第3巻」

家畜人ヤプー〈第3巻〉 (幻冬舎アウトロー文庫)
沼 正三
幻冬舎
売り上げランキング: 110774

天狗の正体がなかなか衝撃的だった。おかめとひょっとこも面白い。
この巻では、麟一郎がどんどんヤプーらしくなっていき、日本だけでなく世界の神話が新しく説明されるのに並行して、イースの宇宙について掘り下げられる。
日本人は遺伝子的に人間ではなく猿だというのはそうかもと思ってしまう。ここから猿の惑星に繋がったりして。
ところでタイムマシンが登場するSFの割には、時間に関する説明が曖昧な気がする。
過去へ行けるということは当然未来に行くこともできるわけで、そうなるとありとあらゆるところで歴史が改竄されていてもおかしくない。
ミステリ的展開を期待すれば、実は裏でヤプーが暗躍していたとか、面白そうだ。

ローリー・リン・ドラモンド「あなたに不利な証拠として」

あなたに不利な証拠として (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ローリー・リン ドラモンド
早川書房
売り上げランキング: 37435

「完全」「味、感触、視覚、音、匂い」「キャサリンへの挽歌」この三つでキャサリン伝記。
「告白」「場所」リズ。
「制圧」「銃の掃除」モナ。
「傷痕」キャシー。面白い半生だが、どこがミステリーなの?
「生きている死者」「わたしがいた場所」サラ。キャシー登場。連作としての繋がりはここしか見出せなかった。
少なくともミステリではなかった。
小説としてよくできてるのかもしれないが、そういうのがいまだにわからない私にはつまらなかった。

沼正三「家畜人ヤプー 第2巻」

家畜人ヤプー〈第2巻〉 (幻冬舎アウトロー文庫)
沼 正三
幻冬舎
売り上げランキング: 108006

世界観の解説はこの作品の性質からして必要不可欠なものだが、なぜ執拗に語源が示されるのか疑問に思っていたところ、ここで解決した。
日本人としての麟一郎の尊厳(なんか違う気がする)が砕かれたことを感じ取るには、アンナ・テラスが誰であるのかを読者も理解する必要があり、そのための伏線だったのだ(これだけが示されたら不自然に感じられる)。
しかし、六十年代に二十歳そこそこの日本人青年がそこまでの衝撃を受けるだろうかという疑問が残った。
いくら記紀を愛読していたとはいえ、戦後の教育を受けたはずであり、天皇は人間だと理解しているはずだ。
現代の感覚からすれば、特に崇め奉る対象でもない存在、ひいては日本人全体の始祖がイース人だったという事実は些事に思える。
まあ、しかし、これだけいろんなものを結びつけるのも簡単な話ではない。
それなりに説得力のある説明をしなければならないからだ。
どえらい知識だ。

谷川流「涼宮ハルヒの分裂」

涼宮ハルヒの分裂 (角川スニーカー文庫)
谷川 流
角川書店 (2007-03-31)
売り上げランキング: 14551

新年度に入り、新たな人物が登場し、世界の別の一面が明らかになる。
超能力者たちの対立は宗教と同じ構図だな。
荒ぶる神か和ぎる神か。聡い人間ならどっちだっていい。
キョンとしては、ハルヒ側に愛着があるだけ今の立場を維持する理由があるということだ。
問題はαとβのパートが同時進行し始めたことだ。
読んだ限り、明らかに平行世界に突入している。
電話をかけてきた女が誰なのかというところから分岐し、細かいところは重なりつつも、全体の流れとしては齟齬が生じている。
そしてβパートで長門が天蓋領域からの攻撃を受けたらしいことを受けて団長自ら出陣するところで幕切れ。
現実世界に目を向け奥付を見ると、それから二年半あまり何も進展していない。
これはつまり風呂敷を畳めなくなったのだろうか?
続きが待ち遠しい、と無難にまとめておく。

広江礼威・虚渕玄「ブラック・ラグーン シェイターネ・バーディ」

ブラック・ラグーン シェイターネ・バーディ (ガガガ文庫)
虚淵 玄
小学館
売り上げランキング: 16212

展開は凡庸だが、それぞれに見せ場はある。
ていうかバラライカが素敵過ぎる。
「FUJIYAMA GYANGSTAR PARADISE」の前日譚に当たるようだ。
しかしとにかくニンジャだ。マンガに逆輸入されそうな濃いキャラ。
それはそれとして、あのレヴィのイラストだけでも買う価値がある。

泡坂妻夫「煙の殺意」

煙の殺意 (創元推理文庫)
泡坂 妻夫
東京創元社
売り上げランキング: 43717

「赤の追想」ミステリー。内容の割には長いかな。
「椛山訪雪図」殺人事件はおまけだ。しかも警察がルーチン的に解決できない類の事件ではない。絵に施された仕掛けがトリックの肝となっているが、読みどころであるべきその点も視覚的なものであるがゆえに文章で表現するのは適当ではないと思える。逆に言えば、これを小説にしたところがすごいのか。
「紳士の園」とぼけた登場人物。何かがおかしい。
「閏の花嫁」デブは食料だった。献身の意味。
「煙の殺意」逆転の発想。
「狐の面」ペテンの種明かし。猿のトリックは再現不能だろうな。
「歯と胴」歯と爪に似たタイトル。少しホラー風味。
「開橋式次第」リアリティの欠片もないコントめいた設定。証拠皆無な推理。

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