桜庭一樹「私の男」

私の男 (文春文庫)
私の男 (文春文庫)
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桜庭 一樹
文藝春秋
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不穏なシンデレラ・ストーリー的な第一章に始まり、時を遡るにつれて二人の親子が犯した罪が明らかになる。
ミステリーとして読むと、ハイライトは養子縁組をした親子が実は生物学的にも親子だったという点だろう。
また謎とは違うが、様々なエピソードの因果関係がはっきりと描かれている点も巧みな伏線として楽しめる。
事実が淡々と並んでいるだけなので、探偵役は読者が務めなければならないのだが、そうさせる魅力、リーダビリティが十分にある。
そうそう、最初文字遣いが気になって読み進めづらかった。
妙にひらがなが多いのだ。
きっと作品の内容に合わせた演出なのだろう。
同じような感覚は筒井康隆の初期短編を読んでいてもよくある。
ところで、こういう禁忌に触れる内容は出版しづらいのではないだろうか。
きわどい描写はしっかりぼかしてあるが、直木賞を取ってベストセラーになったら、非実在青少年が登場することが世間に広まるわけで、その影響はたぶんその辺のエロマンガより大きいと思う。
それとも文章のみなら問題ないのか。
特に終盤はロリコン擁護に使われかねない。
性的虐待が絶対悪だとしても、その定義を問うものだから。
お互いが幸せならそれでいいじゃん。
需要と供給が合致すればそこに市場は形成される、と突然経済学的に言ってみる。
こう主張されると保守派は公序良俗を持ち出さざるをえない。
根拠としては薄弱だが圧倒的な数の力で正当化できるだろう。
しかしそうなった場合、否定された少数派は絶対に納得しない。
まあ、この辺りが現代社会の限界なのだろう。
ありとあらゆる問題に同じことが言えそうだ。今度は社会学的。
ていうかやっぱり眠いと筆がなめらかだな、自分(現在午前三時)。
そういえば、四章辺りから一気に読んだが、外は雨の音がしていた。
雰囲気はぴったり。
それにしても、「GOSICK」と同じ著者なのだ。
名前が同じじゃなかったら気づかないだろうな。
『赤朽葉家の伝説』を読んでみたくなった。これよりミステリ色が強いらしいので楽しみだ。
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三雲岳斗「少女ノイズ」

少女ノイズ (光文社文庫)
三雲 岳斗
光文社
売り上げランキング: 98821

やたらに評価が高いので、事前の知識をできる限りシャットアウトして、どうせまた叙述物なのだろうと勝手に思って読み始めた。
目次を見ると章立てして長編の体裁をとってはいるが、その実、一話完結の中編集である。
それを構成する一編一編はどれも予想外に端正な本格ミステリであって、「GOTH」を彷彿とさせるキャラクターや僕の一人称の平易な語り口が抜群のリーダビリティを実現している。
要するに面白いのだ。
惜しむらくは、続編があまり期待できそうにない終わり方と、そういう結末にするのなら最後に大技一本がなかったことだ。
ダメだダメだ。欲張りはよくない。
これだけ面白いのだからあえてこれから「アスラクライン」を読んでみてもいいかもしれない。

小川一水「フリーランチの時代」

フリーランチの時代 (ハヤカワ文庫JA)
小川 一水
早川書房
売り上げランキング: 207994

「フリーランチの時代」もうすぐごはんがただになる。これが自由の追求。銀河市民はみな不死身なのか。
「Live me Me.」エキサイティングだ。ドラマチックだ。魂はあるのか、あるとしたらどこにあるのか、それはいったいなんなのか、そういう問い。タイトルはどう意味なのだろう?
「Slowlife in Starship」一人で何もせずに生きていくことが可能になった時代。生きがいは何か?人は何を求めるのか?という話。最後に残るのはより高次の欲求、自己実現、社会参加といったものらしい。中学の保健体育の内容だ。もう一歩進んでいたら脱帽しただろう。
「千歳の坂も」不老不死の定義;寿命が延びる速度が老化の速度を超えた状態。確かにその通りだ。永遠を得た人間は次に何を求めるのか? 一部の者は自殺する権利を主張する。今でいう自己決定権だ。しかし健康に生きるということは倫理的道徳的に正しいことなので多勢にはなれなかった。そこでダイ・ヘイヴン政策を取る国が現れる。今の「楽に生きれる」が「楽に死ねる」にそのまま変わった形だ。個人にとって生き続けなければならないことと死ななければならないことのどちらが安楽であるのか?生きても死んでもいい。自分らしくが一番だ。
「アルワラの潮の音」かの童話の作者アレクサンドルの話――ではない。時代は不明だが太平洋に浮かぶ島に住む戦士になれない少年が未来からやってきた者たちの争いに巻き込まれて成長する物語。微妙にミステリーだった。『時砂の王』に描かれなかった物語だが、あまり関連はない。たくさんあった戦争の一つである。

辻真先「改訂・受験殺人事件」

改訂・受験殺人事件 (創元推理文庫)
辻 真先
東京創元社
売り上げランキング: 437973

出版社社長が犯人というのは意外なのか?
よくわからないが。
まあ、読者が犯人、作者が犯人というのと同じメタな視点に立てばそこそこ意外なのかもしれない。
解説はちんぷんかんぷんだったが、推理小説としての粗が目立つというのは同意。
やっぱり書割なんだよな、世界観が。
同じようなレベルの作品でも著者が若ければ、雰囲気的に実写ではなく、アニメーションになってそれなりの説得力は出るものだけど。
作者はアニメを作っていた人らしいが、そういう感じはまったく感じられない。
世代による感性の差なのか、アニメを作った人と見て育った人の違いなのか。
脚本家やシナリオライターがミステリーを書くと、二時間ドラマのノリに限りなく近づくらしい。
映像が付いて問答無用で進められるとそれっぽいのだが、文章になるととたんに陳腐化するのだ。
トリックは第一の事件、第二の事件ともに思いついた。
その程度の発想だということだ。
と、ここまでで超犯人三部作らしいが、残念ながらどれも不発。
やはり新本格以降に慣れ親しんだ身としては過去の名作は色褪せて見えてしょうがない。

辻真先「盗作・高校殺人事件」

盗作・高校殺人事件 (創元推理文庫)
辻 真先
東京創元社
売り上げランキング: 190412

作者は被害者であり、犯人であり、探偵である(1)という作品。
タイトルの通り、盗作によって三人の登場人物を作者として一つの名詞にすればこんな芸当も可能であると証明して見せたのはすごいかも。
ところで、思い出すのはシンデレラの罠。
あちらはリーダビリティの欠如のせいであらすじすら把握できなかったが、おそらく信用できない記述者を使った大技だったのではないか。
こちらは前作同様、メタフィクション。
構造解析;まず(A)が書いた一本の推理小説があった。バイクのひき逃げ犯(X)はそれを盗み、加筆、自分の作品にしようとする。Xは被害者(B)のいとこ(A)に自分がひき逃げ犯であることを知られ、共犯者(Y)が彼を殺害する。死体を得た彼の叔父(C)は、盗まれた小説のトリックを彼から聞いていたので、自己の利益のために現実の事件で再現した。Aの死に際の言葉で犯人を知った叔父は脅迫に打って出るが、共犯者(Y)によって密室殺人の被害者となる。その容疑者にされたのが、Aの恋人(D)。Xはそれを知って自殺。YはXの意思を継いで、他人の小説に登場する探偵を拝借し、ここまでの現実を取り込んだ小説を書き始めるが、持ち込んだ先の編集者(P)が事件の関係者だったため、自分が殺人犯であることを知られてしまう。そしてPに告白の手紙を残して自殺する。Pは残された小説を書き足し完成させる。つまり、この小説の作者はAであり、Xであり、Yであり、Pである。被害者はAであり、Bであり、Cである。犯人はXであり、Yであり、Cである。探偵はPである。したがって作者の要素が被害者、犯人、探偵それぞれの要素を含んでいるので、論理を厳密に適用しなければ、(1)は満たされる。という小説を作中では盗作されたことになっている著者が実際には書いているというややこしい作品。

辻真先「仮題・中学殺人事件」

仮題・中学殺人事件 (創元推理文庫)
辻 真先
東京創元社
売り上げランキング: 378066

読者が犯人というアイデアは不発だったな。
思っていたより一段低いメタ度のせいだ。
読者を限定することで犯人たらしめているという、不完全な形。
ある意味では「ミステリィ対戦の前夜」と同じ形だ。
読んでいるうちに自分が犯人になっていたら、たぶんそれが完全な形なのだろう。
無理だろうな。
まあ、最後の虚実反転はよかったけれど、三部作ということを知っているからには予測できて当然で衝撃も薄れた。
解説の別人ぶりは微妙に面白かった。

三津田信三「六蠱の軀」

六蠱の躯  死相学探偵3 (角川ホラー文庫)
三津田 信三
角川書店(角川グループパブリッシング)
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シリアルキラーもので、ミッシングリンクからのフーダニット。
珍しく、わたしの推理が的中した。
というか、最も単純な可能性を最後まで無視していただけだと思う。
真相を見通しつつ読んでも気づかなかった伏線が解決編で回収された。
たぶん、ミステリとして読み込むハードな読者はこういうポイントで喜ぶのだろうと想像する。
異世界ルールが前の二作より機能しているように感じた。
ひょっとしたら、連続猟奇殺人という題材がわたしの嗜好に合っていただけなのかもしれない。
面白かった。

中村融編「時の娘」

時の娘 ロマンティック時間SF傑作選 (創元SF文庫)
R・F・ヤング他 ジャック・フィニイ
東京創元社
売り上げランキング: 12279

「チャリティのことづて」傑作というのは疑問。時を越えて意識がリンクするというアイデアはSFだが、少年少女の働きにより危機を克服するというありふれたお話。ラストにいたっては唐突でしかない。
「むかしをいまに」突っ込みどころ満載だがすごい。こういうのを傑作というのだ。なぜオチをそこに持ってくるのかわからないが。因果律の逆転。意識は連続。
「台詞指導」ロマンティックそのもの。文体がやさしくてよかった。
「かえりみれば」人生をやり直したいと思って本当にやり直せたら――何にしても大変だという話。ロマンティックか?
「時のいたみ」救えないな。因果の鎖は少々の遊びはあってもだいたい定まっているものらしい。細かな部分は変更可能でも大まかな方向性は変えられない。
「時が新しかったころ」これはロマンチックだ。先の読める展開だが。こういうネタを丁寧に映画とかでやられるとぞぞぞっとするだろう。ところで冒頭数ページは何のことかわからない。導入がもっとスマートであればよかった。
「時の娘」これも先が読めた。疑問が浮かんだので少し考えてみよう。ある女性Aがある男性Bとの間に子供を儲けるとする。遺伝情報的に子は(A+B)/2ということになるはずだ。しかしこの作品ではその子は母親Aと同一人物であり、数式にすると、(A+B)/2=Aとなり、整理すると、A=Bとなる。つまり、この作品を成立させるためには、両親がまったく同一の遺伝子を有することが要求される。……と考えてみたはいいが、これ、正しいのか?
「出会いのとき巡りきて」ロマンティックだが意味がわからない。時の最果てでどうなったの?
「インキーに詫びる」技巧的というのはわかりにくいと同義らしい。過去を探るうちに未来が見えた。

石持浅海「BG、あるいは死せるカイニス」

BG、あるいは死せるカイニス (創元推理文庫)
石持 浅海
東京創元社
売り上げランキング: 252124

女性として生まれてきて、後に男性化するという世界での殺人事件に女子高生が挑む――という話。
まあ読みやすい。
WHOとWHYを論理によって探求するいつもの形式。
BGとは何か?というのもメインの謎である。
舞台設定は奇抜だが、展開はミステリとして王道。
こんな世界だったら、社会はどうなるのか? 人間はどうなるのか? というところまで考えられていて、それが推理に大きく関わっている。
うーん・・・面白くなくはないのだけれど、どこか物足りない感じだ。
たぶん、こちらの不感症だろうな。
結局、ミステリとしての衝撃を求めると「そして誰も・・・」か「アクロイド・・・」のようなプロットで、且つそうであることを読んでいる間に考えさせないような作品、あるいは精巧な叙述トリックを施してある作品しかないみたいだ。
どちらも希少だなぁ。
予備知識なしで読むのも現代では難しいし。
古典を読んで感性を変えようか。
古き良き時代の探偵小説を楽しむことができる感性に。
名作の新訳が立て続けに出版されない限り無理だろうなぁ。
それとも、本格的に別のジャンルに浮気するか。
SF・純文学・ラノベあたりが無難だな。
考えてみよう。

東野圭吾「むかし僕が死んだ家」

むかし僕が死んだ家 (講談社文庫)
東野 圭吾
講談社
売り上げランキング: 1997

衝撃が足りない。
リーダビリティの高さは安心できる。
きのう読んだ現代本格ミステリマップが頭にあったから、トリックorプロット、アクロバットor論理性という二軸で評価してみると、アクロバット×プロットの象限に位置する。
でも叙述ものではないな。
そうか。登場人物が騙されているからだ。
心的外傷と記憶喪失というありがちなネタだが、納得できたかどうかは別にして、なかなか意外な真相で楽しめた。

西尾維新「零崎人識の人間関係 戯言使いとの関係」

零崎人識の人間関係 戯言遣いとの関係 (講談社ノベルス)
西尾 維新
講談社
売り上げランキング: 30884

「クビシメロマンチスト」の裏側の話。
いろんなところでいろんな出会いがあったという事実が明らかになる。
七々見奈波って名前だけはよく出てたけど、ここまで詳細に描写されたのは初めてじゃないか?
魔女性についてはよくわからないが。
人と鬼の違いは心の有無だということで、自分探しの一環として、心を理解するために人を解体していた殺人鬼。
殺人鬼なのに、殺すためではなく、解剖するために殺していたという、ある意味ホワイダニットのミステリとして読めなくもない。
人間関係四部作を読み終わってみて、感想は特にない。

西尾維新「零崎人識の人間関係 零崎双識との関係」

零崎人識の人間関係 零崎双識との関係 (講談社ノベルス)
西尾 維新
講談社
売り上げランキング: 22508

今回は異能バトル。
わかるようなわからないような理屈で展開される。
変態の兄と間違われ、命を狙われる人識。
いやあ、感想を書こうと思ったら、ものの見事に何も残ってない。
この空虚さがいいのか?

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