伊藤計劃「虐殺器官」

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)
伊藤 計劃
早川書房
売り上げランキング: 1640

虐殺器官ってなんだろう? と思って読み始めた。
答えから言うと、脳の残虐な行動をつかさどる部分である(違う?)。
進化の過程でそれは必要とされてきた。
人間はコミュニティを形成する生物である。そのためにはルールが必要であるが、それは良心に基づいて定められる。良心というのは、生存するために都合のよい思考、態度、行動である(なんだかトートロジーじみてきた)。利他的な性向と言い換えてもよい。“情けは人の為ならず”。
しかし、それでは生存できない場合がある。
例として挙げられたのは、干ばつに見舞われた共同体の場合であった。食糧が不足したときにどう行動すれば生き残れるのかという問題だ。利他的な構成員しかいなければ、集団は全滅に向かうだろう。利己的な人間ならば、他人を殺してでも生き残ろうとする。死体をエネルギー源とすることも可能だろう。進化の過程で必要とされた、というのはこういう意味だ。
さて、ストーリーだが、めんどくさいので省略。ポイントは、ジョン・ポールは何をしているのか? なぜそれをしているのか? というミステリ的なものと、主人公の葛藤、かな。大規模な事件を矮小な個人の逆説的な意思に収斂するというのは、何度か読んだことがある。どれもミステリとして評価の高い作品だ。エピローグの捻りは完全に一本取られた。
興味深い話はたくさんあった。視覚の話はどこかで聞いたことがある。見ることと見たものを認識することは違う。処理する脳の部位が異なるからだ。全体として脳の話だった。脳がどれだけ機能していれば意識があるといえるのか? 作戦遂行のために良心を抑制する。自由とは? わたしとは? こういう哲学的な話題になると答えはまず見つからない。無限とか極限とかを連想した。アキレスと亀だ。
感想を書ききれていないような気がするけれど、まあ、私ではこんなものだろう。作者の人生に涙した。
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