石田衣良「非正規レジスタンス」

非正規レジスタンス―池袋ウエストゲートパーク〈8〉 (文春文庫)
石田 衣良
文藝春秋 (2010-09-03)
売り上げランキング: 27190

「千川フォールアウト・マザー」シングルマザーのお話。マコトの過去が明らかに。
「池袋クリンナップス」『大誘拐』だ。本当に優秀なやつは二、三十万ドルの年収では動かない。
「定年ブルドッグ」わたしは育ちがいいから、こういうダメ人間にはついぞお目にかかったことがない。
「非正規レジスタンス」メイド姿の労働組合代表。ワーキングプアーの方々はニートよりも頑張っているらしい。
全体を通してのテーマは親子・家族かな。そしてなんとなく島田荘司と似た印象を持った。社会問題と闘う文筆家ということか。お馴染みの面々は顔は出すが活躍はしない。
スポンサーサイト

森博嗣「ゾラ・一撃・さようなら」

ゾラ・一撃・さようなら (集英社文庫)
森 博嗣
集英社 (2010-08-20)
売り上げランキング: 238756

久しぶりの森博嗣のような気がする。安定感はさすが。今回は本格ミステリではないようで、謎解き要素はほとんどない。ZOLA=吉田、というのは物凄い暗号だった。章末にあるモノローグの感じから、叙述トリックを疑っていたのだが、少なくとも表面的にはそういうことはなかった。説明は省略されているので、もしかしたら本当は違う構図なのかもしれない。

芦辺拓「紅楼夢の殺人」

紅楼夢の殺人 (文春文庫)
芦辺 拓
文藝春秋
売り上げランキング: 396734

読みにくいようで微妙にそうではなかった。色々と本格っぽい事件が起こるが、その派手さに比べて謎解きはつまらない。しかし、きっとトリックの解明はこの作品におけるミステリとしての本質ではないのだ。では、何なのかというと、それは、異世界の論理に則って導かれる意外な真相である。そういう意味ではファンタジーに違いない。山口雅也と同じだ。探偵小説であることを利用したメタなミステリである、とあとがきにあったが、それがすべてである。

森見登美彦「きつねのはなし」

きつねのはなし (新潮文庫)
森見 登美彦
新潮社
売り上げランキング: 28963

「きつねのはなし」ホラーと言えばホラー。だがこれと言って恐ろしいことが起きるわけではない。どことなく不気味な印象。天城を介した因果譚として読めば、ミステリなのではないか。HOWではなくWHY。誰が何と何を交換したのか、という黙示的な謎が現れる。暇があれば解答に挑んでも面白いと思う。
「果実の中の龍」逆転に次ぐ逆転。とてもスリリングだった。物語至上主義とでも言おうか、くだらない事実よりも面白い法螺話のほうがずっと価値があるという考えだ。小説家の存在意義である。ところで、どういうことだろう。坂の上の屋敷に棲む狐の面を被った女性が登場し、ナツメと名乗った。芳蓮堂も存在する。それらが記されたノート。残り二話で何らかの合理的解決があるかもしれない。
「魔」胴の長いケモノ――雷獣らしい――に憑かれ、文字通りの通り魔と化すひとびとの物語。事件の全体像が示されることはないが、何があったのかはわかるように書かれている。引き算の美学というやつだ。いや、ただの方程式かもしれない。
「水神」最後はひたすら不思議な話で、少し面白みに欠けたように思う。なんとなく因果の鎖が見えたような気もするが、どうだろう。要するに、直次郎が水の化物と何らかのかかわりを持ち、それによって栄華を得、しかし同時に呪われた、ということではないだろうか。そしてついに解き放たれた。芳蓮堂の女性が登場するが、誰かはわからない。曽祖父のコレクションの中に、これまで登場した品物があった。
時系列で見ると、「水神」→「魔」→「果実の中の龍」→「きつねのはなし」ということになるだろうか。この世界の理を完全に理解できたら、物凄いカタルシスを味わえそうな予感がある。

森見登美彦「四畳半神話大系」

四畳半神話大系 (角川文庫)
森見 登美彦
角川書店
売り上げランキング: 9356

第一話;映画サークル『みそぎ』に入った世界の話。アニメを先に見ていたのでいきなりハッピーエンドになったのには驚いた。テーマが違うのだ。こちらは毎話占いにしたがって行動し、大団円を迎えるのだが、それでも過去の選択に対する不満や後悔は消えることなく、もしもあの時ああしていたら……という別の可能性を夢見、改めて世界を再構築するようだ。アニメでは毎話好機を掴み損ね、ようやく最終話でハッピーエンドに収束した。十一回も繰り返すにはそうでないと成立しない。まだ一話しか読んでいないのでわからないが、少なくともアニメはあるべき世界の追求、その否定、現実の受容、結論として、自分が変わらなければ世界は変わらないというメッセージが明確にあったように思う。
第二話;樋口師匠に弟子入りした世界の話。自虐的代理代理戦争。物語として起承転結に従うなら「承」に当たる。そんな感じで登場人物の属性が描かれている。
第三話;ソフトボールサークル『ほんわか』に入った世界の話。宗教色に馴染めず小津と一緒に逃げ出し、薔薇色のキャンパスライフは遠のいた……かと思われたが、にわかに三人?の女性が近づいてきて、しかし結局すべて破綻する。
最終話;秘密機関『福猫飯店』に入った世界の話。小津とコンビを組んだせいで意に沿わず出世してしまい、相島先輩の逆鱗に触れ、小津に助けられるが、組織から足を洗い、四畳半に引きこもった。そして無限に連なる自分の部屋に閉じ込められ、彷徨い、あったかもしれない薔薇色のキャンパスライフなんてものを夢想しなくても、自分のいたありのままの世界が十分に素晴らしいものであったことを思い知る。そして小津の病室での会話がそれまでの三話と逆転して終幕。
元々あった世界に『私』という闖入者が現れ、毎回異なる選択をすることによって、見える景色が変わり、少しだけ事実も変動する、と考えるとわかりやすい。要するにマルチエンディングのアドベンチャーゲームなのだ。アニメの構成・演出は素晴らしかったことが改めてわかった。そして原作も面白かった。

検索フォーム
Amazon
最新記事
リンク
カウンター
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
RSSリンクの表示
QRコード
QR