森見登美彦「きつねのはなし」

きつねのはなし (新潮文庫)
森見 登美彦
新潮社
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「きつねのはなし」ホラーと言えばホラー。だがこれと言って恐ろしいことが起きるわけではない。どことなく不気味な印象。天城を介した因果譚として読めば、ミステリなのではないか。HOWではなくWHY。誰が何と何を交換したのか、という黙示的な謎が現れる。暇があれば解答に挑んでも面白いと思う。
「果実の中の龍」逆転に次ぐ逆転。とてもスリリングだった。物語至上主義とでも言おうか、くだらない事実よりも面白い法螺話のほうがずっと価値があるという考えだ。小説家の存在意義である。ところで、どういうことだろう。坂の上の屋敷に棲む狐の面を被った女性が登場し、ナツメと名乗った。芳蓮堂も存在する。それらが記されたノート。残り二話で何らかの合理的解決があるかもしれない。
「魔」胴の長いケモノ――雷獣らしい――に憑かれ、文字通りの通り魔と化すひとびとの物語。事件の全体像が示されることはないが、何があったのかはわかるように書かれている。引き算の美学というやつだ。いや、ただの方程式かもしれない。
「水神」最後はひたすら不思議な話で、少し面白みに欠けたように思う。なんとなく因果の鎖が見えたような気もするが、どうだろう。要するに、直次郎が水の化物と何らかのかかわりを持ち、それによって栄華を得、しかし同時に呪われた、ということではないだろうか。そしてついに解き放たれた。芳蓮堂の女性が登場するが、誰かはわからない。曽祖父のコレクションの中に、これまで登場した品物があった。
時系列で見ると、「水神」→「魔」→「果実の中の龍」→「きつねのはなし」ということになるだろうか。この世界の理を完全に理解できたら、物凄いカタルシスを味わえそうな予感がある。
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