島田荘司「UFO大通り」

UFO大通り (講談社文庫)
島田 荘司
講談社 (2010-10-15)
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「UFO大通り」形式は見事にホームズ譚。幻想的な謎とその明け透けな解明はいつもの島田本格。今回はいつにも増して石岡君の馬鹿さ加減がいい味を出していた。やはり名探偵の助手は頭が弱くないといけない。
「傘を折る女」正しく御手洗&石岡で、安楽椅子探偵だった。
犯人の描写がなければ捻りの効いた短編に収まっていたのではないか。しかしそこはゴッド・オブ・ミステリーともなると、トリックの安売りはしないのだろうな。奇妙な謎とその“論理的”解明、一人の善良な(と自分では思っている)人物が犯罪者になる顛末の二本立てといった感じで、まあ面白かった。アナフィラキシーが伏線として機能していたのには笑った。
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大森望・日下三蔵編「虚構機関」

虚構機関―年刊日本SF傑作選 (創元SF文庫)
田中 哲弥
東京創元社
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小川一水「グラスハートが割れないように」読みやすい。たしかにSFなのかもしれないが、少なくとも『SF』と聞いてイメージする内容ではない。結果としていい話なのだが、どうも登場人物の思考過程が読めなかった。

山本弘「七パーセントのテンムー」どこまでがリアルの話なのかわからないが、書いてあるとおりだとすると、私はテンムーである。社会不適合な性質を、意識がないという一文で見事に説明できている。作中では、意識がないゾンビは人と決定的に違うという見解を否定し、意識なんてたいしたものではないと結論付けているが、であるならば、意識に優越している無意識とは何なのかという疑問が残る。本能というものとも違うらしい。それに、意識がないことが欠陥であることはれっきとした事実である。

田中哲弥「羊山羊」確かに筒井康隆並みの破壊力だ。登場人物が尽く壊れていく様子がすばらしい。

北國浩二「靄の中」落ちがよくわからない。生まれたばかりの赤ん坊でも溺れるだろう、常識的に。ということは主人公も寄生されていたということなのか。

円城塔「パリンプセストあるいは重ね書きされた八つの物語」内容は部分的にしか理解できなかった。全体としてどのような枠組みの中で書かれているのか、もしかしたら冒頭で示されていたのかも知れないが、私には読み取ることができなかったので、主題はおろか、物語としての顛末すら明らかではない。しかし、なんとなく面白い。

中原昌也「声に出して読みたい名前」驚くほどわからない。で? って感じ。

岸本佐知子「ダース考 着ぐるみフォビア」着ぐるみフォビアは面白かった。あのランドにはそんな秘密があったのか。

恩田陸「忠告」普通のショート・ショート。

堀晃「開封」これもまあ普通。星新一とはそういうことなのだろうか。

かんべむさし「それは確かです」これはSFではない。

萩尾望都「バースデイ・ケーキ」やはり絵柄は古いが、最近の作品だけあって読みやすかった。同じネタでもっとわかりやすくホラーにできる。というか、構成が怪談そのもの。

福永信「いくさ 公転 星座から見た地球」まったくわからない。タイトルの意味も不明。

八杉将司「うつろなテレポーター」面白かった。長編でやられたらうんざりするけれども、短編ならこのくらい甘いのもありだ。どうやら私は量子論が好きらしい。

平谷美樹「自己相似荘」心霊現象をむりやり科学的に説明すればこうなる。しかしそれは世界観なので、この際問題ではない。問題なのは、なぜ彼らは解放されたがったのか、という謎が結局解明されなかったことである。しっくり来ない。

林譲治「大使の孤独」よくわからないミステリという位置づけでよいのではないか。タイトルがネタばれ。

伊藤計劃「The Indifference Engine」カオスから偽りの秩序を経てさらなるカオスへ。虐殺器官もそうだったが、終末とはこういうことか。

芦辺拓「グラン・ギニョール城」

グラン・ギニョール城 (創元推理文庫)
芦辺 拓
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そしてこれである。率直な感想を先に述べておくと、あまり面白くなかった。理由はおそらく、虚実の混合の仕方が、私の好みとは違っていたからだと思う。現実が虚構に侵食される、というほうが面白いと思うのだが、本作はその逆だった。当初の作中作とのカットバックは非常に魅力的に思えたのだが、舞台を城を模したホテルに移して以後、虚構が現実に吸収されてしまって、ある意味では普通の(本質的には普通とは程遠いのだが)ミステリになってしまった。謎解きにおいては、ひとつの事象について、現実の中の劇として、また小説として多重解決が試みられており、そのアイディアは面白かった(入れ替わりのトリックはイメージできなかったが)。だが、それだけだ。メタ・ミステリとしては『紅楼夢の殺人』のほうが完成度は高いように思う。エピローグに関しては、巧いことやったな、といった感じ。

西澤保彦「聯愁殺」

聯愁殺 (中公文庫)
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西澤 保彦
中央公論新社 (2010-09-22)
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推理。推理。推理。さすがは西澤版『毒チョコ』。推理作家が妄想を繰り広げる辺りはもう圧巻。主人公についての描写で、序盤ですでにフーダニットに関しては読めてしまった。フェアに徹するのも良いが、私のようなにわかファンにはもっと衝撃をサービスして欲しいものだ。トリックはプロットそのもの。よくあるパターンだが、一体そのピースをどこに収めるのか、というポイントで私は間違った。おかげで推理は迷宮入り。肝となるアイディアは、『被害者』=『依頼人』=『犯人´』という些か複雑なもの。しかし、整理してみると非常に単純な構造だとわかる。短い問題編と長い解答編があり、そこに隠されていた瑕疵に気づいて修正し、改めて問題編と看做すことで、真の解決にたどり着く。『メタミステリ』=『ミステリについてのミステリ』という解説は非常にわかりやすかった。確かにメタフィクションとごっちゃになっていたところだ。そこで挙げられていた二作品『グラン・ギニョール城』と『紅楼夢の殺人』は、前者は積読中で後者は最近読んだばかりなので、読み比べてみよう。共時性を感じた。また、論理はレトリックであるという主張にも共感した。形而下の論理は唯一絶対ではない。「AはBだからCである」、「AはBだからCではない」という二つの命題が同時に成立しうるのである。ところで、あの名前だけはどうにかして欲しい。せめて出てくるたびにルビを振るとか。シリーズキャラクターならともかく、読みづらくて堪らない。

三津田信三「災園」

災園 (光文社文庫)
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三津田 信三
光文社 (2010-09-09)
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文章はいつもどおり平易でよいのだが、どこか筆運びがぎこちない気がする。
真相は予想の範囲に見事に収まった。
そして期待通りの名前の話。
結果として、全然恐くないし、謎解き要素もなく、それほど面白くなかった。
解説はわかりやすかった。

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