虚淵玄「ブラック・ラグーン 罪深き魔術師の哀歌」

ブラック・ラグーン 2 (ガガガ文庫)
虚淵 玄
小学館
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登場人物の思惑が交差するせいで、プロットはかなりややこしい。命令された狂言誘拐に失敗し次善策を実行しようとするエダと、張からの依頼でCIAをロアナプラから排除しようと画策するロックの対決というのが主な内容だろうか。魔術師の二つ名を持つ伊達男がたまたまロアナプラにいたことから、歯車は狂い、物語は加速する。頭の弱い富豪の娘、中国マフィア、まさかのシャドー・ファルコン再登場。結局、予定調和な感は否めないが、外伝なので仕方がない。冒頭からロットンのモノローグは強烈だった。無駄に思わせぶりなのは軽度の叙述トリックといえなくもない。ところで、エピローグでのシェンホアの部屋はもはや魔窟と化しているな。
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三津田信三「作者不詳 ミステリ作家の読む本」

作者不詳 ミステリ作家の読む本 (上) (講談社文庫)
三津田 信三
講談社 (2010-12-15)
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作者不詳 ミステリ作家の読む本 (下) (講談社文庫)
三津田 信三
講談社 (2010-12-15)
売り上げランキング: 150886

現実を侵食する奇書を手に入れた飛鳥信一郎と三津田信三の二人が自らの失踪を防ぐためにリドル・ストーリーの謎を解く。

第一話;不可解な謎はただ一つの事実によって解決された。叙述トリック。
第二話;誘拐犯とその手段、赤子の行方は想像通り。推理ではなく想像なので、騙される快感も謎を解いた達成感もない。
第三話;推理の方法は新鮮だった。ある種の信頼できない語り手による記述の中から、信頼に足る部分だけを抜き出すというものだ。その上での論理の帰結には不満が残った。誤って毒を飲んでしまったとは何事か。
第四話;毒殺。どうやって毒物を飲ませたのか。私の推理は明日香とほぼ同じだが、やはり説得力に欠ける。ところで、今回の怪異だが、明日香ではなかっただろうか。彼女が持ってきた飲食物の中に毒が入っていて、それを三津田が口に入れてしまったとしたら、お守りについてとりあえず説明できる。そうなると、明日香は推理を邪魔していたはずだから、彼女の解答はダミーということになる。したがって老人犯人説が正解なのだろう。機会も動機も揃っているから、あとは物的証拠が必要だが、作中でも放置されているので検討しない。またしても名前の話だ。『迷宮社』→米道+家中+神地。こじつけか暗合か。
ここで上巻は終わりだが、白紙が怖い。
意図がわからないから。
未知とは恐怖であり、好奇心の端緒でもある。
第五話;コアのネタについては視点を意識する癖がついてしまっているので、違和感に気づけた。気づけば答えは明らかである。細かい伏線の回収はできなかった。この同人誌は朱雀地方の神々櫛村をテーマにしたアンソロジーという解釈でどうだろうか。挿絵の首はまだ謎のまま。祟りの原因はそこかも。
第六話;今回は推理を先に書いておく。犯人はルリ。動機は痴情の縺れ(笑)。鏡を使い太陽光を反射させ、千砂の目を眩ませた。千砂は手で庇を作って上から差す日光を遮断したのだが、そのとき下から予期せぬ反射光を受け、体勢を崩し、落下した。ルリは化粧をするのでコンパクトを携帯していても不思議ではない。答え合わせ≫ほぼ正解。やはり伏線を拾い切れてはいない。こうなると解決はメタ・フィクショナルなものになる予感。予感だけ。
第七話;真相は意外だったが、衝撃は弱かった。ミステリとしての出来は良いのかもしれない。良質な本格ミステリが面白いとは限らない。『テン・リトル・インディアン型ミステリ』についての記述などを鑑みると、一種のメタ・ミステリだと言える。
しかし、まだこの呪いの本の謎は残っている。なぜ謎を解くと怪異が消えるのか、それぞれの話が実話に基づくとはいえ(いや、だからこそ、か)、なぜ合理的な解答を導くのに必要な情報を備えているのか、あるいは真偽の判定の仕組みはどうなのか、そもそもなぜ読者が怪異に見舞われるのか、ざっとこの辺りがまだ説明されていない。
エピローグ;まずはどんでん返しから始まる。そこでこれまでのすべてを無に帰すのかと思いきや、小説が現実を侵食するのではなく、現実が小説に取り込まれていたことが明らかにされ、それは読者としての私が今手にして読んでいるこの本そのものであるという、まさにメタ・フィクション。
ということは、これを呼んだ私も『迷宮草子』の中に取り込まれており、今この文章を書いている状況も小説として描写され、誰かに読まれていることになる。
生憎そうでないのは怪異に遭遇していないというただ一つの事実によって反証可能なのだが、それはフィクションだから仕方がない。
しかし、小説の登場人物に「探偵はお前だ!」と言われたのは初めてだったのでなかなか興奮した。
ラストだけで十分な価値があるな、これは。
ところで、途中まで気にも留めていなかったが、“飛鳥明日香”ってすごい名前だ。

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