谷川流「涼宮ハルヒの驚愕(前)」

涼宮ハルヒの驚愕 初回限定版(64ページオールカラー特製小冊子付き) (角川スニーカー文庫)
谷川 流
角川書店(角川グループパブリッシング) (2011-05-25)
売り上げランキング: 1174

世界は分裂したまま、最後まで劇的なイベントは発生しなかった。いや、そうでもないか。αではSOS団に渡橋泰水という部員が新しく入ってきたし、彼女が世界分岐直後にかかってきた電話の相手だということも判明したし、βでは長門のダウンに連動して喜緑さんが前面に出てきたし、まさかの朝倉復活もあり、キョンは自分が事件の中心にいることを自覚して、対決姿勢を明確にした。問題は、これからどうなるか、だ。分裂した世界だが、平行しているようでいて、実は、記述の通り、同一時間軸上に交互に並んでいるのではないか、という疑いが出てきた。世界を超えて因果関係的なものがどことなく見て取れるのだ。まあ、これも続きを読んでのお楽しみだ。ついでだが、佐々木は可愛いな。
スポンサーサイト

谷川流「涼宮ハルヒの分裂」

涼宮ハルヒの分裂 (角川スニーカー文庫)
谷川 流
角川書店 (2007-03-31)
売り上げランキング: 10270

「驚愕」を購入したので、復習がてら読んでみた。再読してわかったのはまったくといっていいほど覚えていないということだ。最初に読んだのは二年前。二年間で記憶はほとんど消えていた。読み直してよかった。ここであらすじを記しておく。春休み最終日。SOS団の活動のためいつもの駅前にやってきたキョンは旧友の佐々木と出会った。SOS団の面々に彼女を紹介した。その日以後、閉鎖空間の発生頻度が上がった。原因は嫉妬めいた戸惑い? そして新学期。新入部員の勧誘を画策するハルヒ。休日の土曜日。朝から駅前にやってきたキョンは集合場所で佐々木と朝比奈誘拐犯と再会し、もう一人の見知らぬ少女と出会い、SOS団と敵対する勢力と佐々木がつながっている事を知る。そこでは何もおきない。そして帰宅しその夜、入浴中のキョンに電話がかかってきたところで世界はαとβの2つに分裂したらしいことが読者にはわかる。大きな違いは、電話の相手、入団希望者がいるかどうか、長門が休んだかどうか。しかし平行世界だからなのか似た場面も多い。感想は以前に書いているから今回はよしておく。

舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日(下)」

ディスコ探偵水曜日〈下〉 (新潮文庫)
舞城 王太郎
新潮社
売り上げランキング: 191512

まったくといっていいほど理解できなかったが、とにかくすごかった。文脈を読んで作ってあらゆる物事に意味を与え時空を操り死んだり生き返ったりして、究極的に世界を切って閉じたことで滅亡を確定させ、新しい世界を作った。もう何が何だか。こういう話にこそ解説が必要だと思うのだが。
無理やりにでもまとめておこうか。運命と意志の力で世界はある。強力な意思は世界を変えられる。世界は不確かだ。この世界を固定するのは共通認識。独りでは世界どころか自分すら危うい。だから他人は必要だ。
これだけのものを全て計算ずくで創ったとしたら、舞城王太郎は頭がおかしい。
ちょっと考えてみたが、最初に時間SFにたいする挑戦を思いついて、世界創造まで膨らみ、そういう形而上の概念をパイナップル・ハウスの事件に落とし込み、ペダンティックな装飾を施したのではないか。というかこれ以外では辻褄が合わせられない。物語の展開は登場人物に任せればよいのでそれほど難しくはないと思う。
中盤までの大推理劇はまだそういうこともあるだろうといった感じで曲がりなりにも理解しながら読めていたのだが、時空移動しだすともう頭が追いついていかなかったので理屈は抜きにストーリー・ラインだけ追うようにした。それでも面白かったのだからすごい。時間とか世界観とかは途中まで私が考えていたのと同じだったが(運命既定論とか)ものの見事にそれを超えていった。降参です。

舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日(中)」

ディスコ探偵水曜日〈中〉 (新潮文庫)
舞城 王太郎
新潮社
売り上げランキング: 186406

探偵たちのダイナミックな推理が続き、尽く外れる。そしてようやくディスコが推理を始め、探偵たちの発想をつなぎ合わせ、たった一つの荒唐無稽な事実の発見により、パインハウスの事件は一応の解決を見るのだが、それは新たな事件の始まりだった。今度の依頼人は人語を操るパンダだ。彼女の話では、なんと2006年を境に時は折り返しているという。そんなことができる人間は梢を陵辱した男だけだ。「○ん○ん」→「0202」そして梢の記憶がディスコの目の前で起こる。下巻へ。
世界は厳然とそこにあるのではなく、人の強い意志によりいかようにも形を変える。いうなれば積極的な人間原理。このルールが明らかになったことで、物語はミステリーからSFへと遷移する。あれだけ散らかっていた伏線がここへ来て急速に回収され、残るはラスボスとの対決のみ・・・かな?

舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日(上)」

ディスコ探偵水曜日〈上〉 (新潮文庫)
舞城 王太郎
新潮社
売り上げランキング: 136298

あらすじはなんのこっちゃわからなくなるので割愛。
文体が読みにくい。でも「煙か土か食い物」もこんな文体だったような気がする。
タイムスリップだとか魂の入れ替わりだとか無闇に壮大な暗号だとかロボトミーだとか死体に魂が入るとか、事象や推理のぶっ飛び具合はいつもどおり。水星C登場後はギャグめいた人物のオンパレード。特に終盤の名探偵たちによる推理は圧巻。それまでの全てを否定したかと思いきや、彼らの死によりそれすら否定される。時間、意識、世界。もう何がなんだかわからない。

森見登美彦「美女と竹林」

美女と竹林 (光文社文庫)
森見 登美彦
光文社 (2010-12-09)
売り上げランキング: 38566

妄想エッセイ。細かいところを気にしなければ普通に面白い。「竹林の夜明けぜよ」美女と竹林は等価らしい。かぐや姫。謎の筆者。大学時代の登美彦氏は私と似ていた。この種の人間はどこにでも一定数存在するらしい。親近感。

伊藤計劃「ハーモニー」

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)
伊藤 計劃
早川書房
売り上げランキング: 3849

大災害(核爆弾が降り注いだらしい。どうやら「虐殺器官」と同じ世界観のようだ)から数十年後の世界。人類は科学技術で病気を克服し、誰もが善意と社会性の塊となっていた。一度滅亡の危機に瀕したことで、命の価値が高騰し、個人は社会の資源であるという考えが一般化した。ユートピアである。そんな社会の空気になじめず自殺を選ぶ人々は年々増え続けていた。主人公は霧慧トァン、かつて自殺を試み、現在は世界の秩序を守るWHOの螺旋監察官。嗜好品を求めて戦場を転々としていたが、とうとう上司に見つかってしまい、謹慎を言い渡され、日本に戻ってきた。全世界で同時多発的に六千人以上が自殺を図った。彼女の目前で旧友が首を切り裂いた。明らかに人為的な犯罪である。しかし、どうやって?目的は? 謎を追ううち、すでに死んだはずの憧れの人物にたどり着く。そして陰謀。
あらすじはこれくらいにして、キーワードは、生命、遺伝、進化、意識、幸福、善意。
「虐殺器官」と対を成しているように思う。たとえば、「虐殺器官」は混沌から偽りの平穏を経て更なる混沌へ、という物語だったが、「ハーモニー」は不完全な平穏から一時的な混沌を経て完全な平穏が現出した。
世の中には原理、原則というものがある。たとえば基本的な経済の仕組みはすでに解き明かされている。しかし現実はその理論に沿わず、多くの、ときには手の打ちようのない問題が発生する。それはなぜか? 答えは、前提が非現実的だからである。完全情報下の合理的な個人。現実は知らないことばかりだし、人間は合理的な選択をするとは限らない。
小ネタ;ハルヒ、舞城。気づいたのはこれだけ。他にもあるかもしれない。
女神転生的に考えてみると、「虐殺器官」はChaosルート、「ハーモニー」はLawルートということになるが、もしも第三作があったなら、それはNeutralルートになっただろうし、同時に人類にとっての正答になったのかもしれないと思うと、著者の急逝が残念でならない。

初野晴「退出ゲーム」

退出ゲーム (角川文庫)
初野 晴
角川書店(角川グループパブリッシング) (2010-07-24)
売り上げランキング: 94239

「結晶泥棒」フェアじゃない。犯人当てなら失敗作だ。一番衝撃的だったのは変態の告白。
「クロスキューブ」パズルの答えは予想の範囲、というかそれしかない。人間ドラマの混ぜ方が上手いのかな。
「退出ゲーム」これほど頭を使って損をした気分になったのはいつ以来だろうか。まあ、でも、人を駒のように動かすのは嫌いじゃない。ここにも重たいドラマが。
「エレファンツ・ブレス」意外な真相という意味ではすごい話だ。緻密な論理ではなく漠然とした連想なのが悔やまれるところ。
解説を読むと表題作の解釈が私のものとは違っていた。私が間違っていたら、それほど出来のいい作品ではなかったことになる。まあ、どうでもいいけれど。

森見登美彦「夜は短し歩けよ乙女」

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)
森見 登美彦
角川グループパブリッシング
売り上げランキング: 961

とてもオモチロかった。どこかで見たことのある人物が登場する魔都、京都。季節ごとのエピソードはそれぞれ混沌としながらも最後は綺麗にまとまっていて、のどごしさわやか。偽電気ブランを飲みたくなる。久しぶりに退屈を感じず読みきることができた。

舞城王太郎「NECK」

NECK (講談社文庫)
NECK (講談社文庫)
posted with amazlet at 11.12.12
舞城 王太郎
講談社 (2010-07-15)
売り上げランキング: 172122

「a story」ファンタジーとしては案外王道なのかもしれない。特異な文体と狂った論理のせいでそういう印象は薄いが。何気に青春小説でもある。
「the original」オチがひどい。多分に視覚的な叙述トリックまではああ舞城だなといった印象なのだが、その後がとにかくひどく、不条理極まりない。
「the second」完全にホラーなので当然なのかもしれないが、尽く意味がわからない。意外な人物と叙述トリックというミステリっぽいネタは仕込んであったが、意図が見えない。
「the third」メタフィクション!アインシュタインによれば質量とエネルギーは等価らしいので、精神エネルギー的なものを仮定すれば恐怖が実体化するという理屈は頷けなくもない。すると冥王星Oの登場も納得できるし、二次創作という言葉の説得力も凄まじい。けれどどこか物足りないのは、舞城節が押さえられていたからだろう。地の文であの疾走感が味わえないのは残念だ。

検索フォーム
Amazon
最新記事
リンク
カウンター
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
RSSリンクの表示
QRコード
QR