伊藤計劃「ハーモニー」

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)
伊藤 計劃
早川書房
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大災害(核爆弾が降り注いだらしい。どうやら「虐殺器官」と同じ世界観のようだ)から数十年後の世界。人類は科学技術で病気を克服し、誰もが善意と社会性の塊となっていた。一度滅亡の危機に瀕したことで、命の価値が高騰し、個人は社会の資源であるという考えが一般化した。ユートピアである。そんな社会の空気になじめず自殺を選ぶ人々は年々増え続けていた。主人公は霧慧トァン、かつて自殺を試み、現在は世界の秩序を守るWHOの螺旋監察官。嗜好品を求めて戦場を転々としていたが、とうとう上司に見つかってしまい、謹慎を言い渡され、日本に戻ってきた。全世界で同時多発的に六千人以上が自殺を図った。彼女の目前で旧友が首を切り裂いた。明らかに人為的な犯罪である。しかし、どうやって?目的は? 謎を追ううち、すでに死んだはずの憧れの人物にたどり着く。そして陰謀。
あらすじはこれくらいにして、キーワードは、生命、遺伝、進化、意識、幸福、善意。
「虐殺器官」と対を成しているように思う。たとえば、「虐殺器官」は混沌から偽りの平穏を経て更なる混沌へ、という物語だったが、「ハーモニー」は不完全な平穏から一時的な混沌を経て完全な平穏が現出した。
世の中には原理、原則というものがある。たとえば基本的な経済の仕組みはすでに解き明かされている。しかし現実はその理論に沿わず、多くの、ときには手の打ちようのない問題が発生する。それはなぜか? 答えは、前提が非現実的だからである。完全情報下の合理的な個人。現実は知らないことばかりだし、人間は合理的な選択をするとは限らない。
小ネタ;ハルヒ、舞城。気づいたのはこれだけ。他にもあるかもしれない。
女神転生的に考えてみると、「虐殺器官」はChaosルート、「ハーモニー」はLawルートということになるが、もしも第三作があったなら、それはNeutralルートになっただろうし、同時に人類にとっての正答になったのかもしれないと思うと、著者の急逝が残念でならない。
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