道尾秀介「鬼の跫音」

鬼の跫音 (角川文庫)
鬼の跫音 (角川文庫)
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道尾 秀介
角川書店(角川グループパブリッシング) (2011-11-25)
売り上げランキング: 4305

内容(「BOOK」データベースより)
刑務所で作られた椅子に奇妙な文章が彫られていた。家族を惨殺した猟奇殺人犯が残した不可解な単語は哀しい事件の真相を示しており…(「〓(ケモノ)」)。同級生のひどい攻撃に怯えて毎日を送る僕は、ある女の人と出会う。彼女が持つ、何でも中に入れられる不思議なキャンバス。僕はその中に恐怖心を取って欲しいと頼むが…(「悪意の顔」)。心の「鬼」に捕らわれた男女が迎える予想外の終局とは。驚愕必至の衝撃作。


“驚愕必至の衝撃作”という煽りは少なくとも表面的には正しくない。
そういう期待をしながら読むとがっかりすることになるだろう。

「鈴虫」ミステリーだったけれど本格ではなかった。鈴虫の性質が核としてあってその周りに話を作った印象。意外な真相といえばそうなのだが、そもそも謎の設定が曖昧のなので衝撃はまったくない。『容疑者xの献身』を思い出したけれど、よく考えてみるとそんなに似ているわけでもない。
「犭(ケモノ)」安易だが捻りが効いている。こういうのは楽しい。
「よいぎつね」終盤で虚実が混同しているのかと思えばれっきとした現実で、大オチにいたってはホラーかと思うような内容。合理的な解釈もできるがいかんせん説得力がない。
「箱詰めの文字」その合理的な解釈が出来損ないの作中作となって描かれていた。物語としては大筋での筋は通っているのだが、細かいところで納得できない。三回ひっくり返して着地を失敗したみたいな感じ。
「冬の鬼」日記の仕掛けは面白いが驚きはまったくない。とにかくSと鴉が何なのか気になる。
「悪意の顔」これはホラーだ。結局Sと鴉は何だったのか?
京極夏彦の解説がまるで京極堂みたいに回りくどくてわかりやすかった。
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米澤穂信「犬はどこだ」

犬はどこだ (創元推理文庫)
米澤 穂信
東京創元社
売り上げランキング: 64631

内容(「BOOK」データベースより)
開業にあたり調査事務所“紺屋S&R”が想定した業務内容は、ただ一種類。犬だ。犬捜しをするのだ。―それなのに舞い込んだ依頼は、失踪人捜しと古文書の解読。しかも調査の過程で、このふたつはなぜか微妙にクロスして…いったいこの事件の全体像とは?犬捜し専門(希望)、25歳の私立探偵、最初の事件。新世代ミステリの旗手が新境地に挑み喝采を浴びた私立探偵小説の傑作。


これはハードボイルドなのか?微妙だな。
とにかく結末がすごい。
やりすぎだろ、と思ったけれど、それはきっと作風とのギャップからくるもので、客観的に見ればそうでもない。

米澤穂信「クドリャフカの順番」

クドリャフカの順番 (角川文庫)
米澤 穂信
角川グループパブリッシング
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内容(「BOOK」データベースより)
待望の文化祭が始まった。だが折木奉太郎が所属する古典部で大問題が発生。手違いで文集「氷菓」を作りすぎたのだ。部員が頭を抱えるそのとき、学内では奇妙な連続盗難事件が起きていた。盗まれたものは碁石、タロットカード、水鉄砲―。この事件を解決して古典部の知名度を上げよう!目指すは文集の完売だ!!盛り上がる仲間たちに後押しされて、奉太郎は事件の謎に挑むはめに…。大人気“古典部”シリーズ第3弾。


上手いな。
そして面白い。
どこかで似たような小説を読んだ気がするんだけど思い出せない。勘違いかもしれない。
シリーズならではの面白さがあるので、やっぱり順番に読むべきだ。

米澤穂信「愚者のエンドロール」

愚者のエンドロール (角川スニーカー文庫)
米澤 穂信
角川書店
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内容(「BOOK」データベースより)
「折木さん、わたしとても気になります」文化祭に出展するクラス製作の自主映画を観て千反田えるが呟いた。その映画のラストでは、廃屋の鍵のかかった密室で少年が腕を切り落とされ死んでいた。誰が彼を殺したのか?その方法は?だが、全てが明かされぬまま映画は尻切れとんぼで終わっていた。続きが気になる千反田は、仲間の折木奉太郎たちと共に結末探しに乗り出した!さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリの傑作。


あらすじからは「探偵映画」を思い出す。中身は全然違うけど。
何ていうかね、映画的に、小説的に、ミステリ的にかなり凝っているのはわかるんだけど、そしてそれは成功しているとも思うんだけど、衝撃がないんだよな。
上手いし、面白いんだけど、何かね。
でも、これで物足りないのは強欲だよな。

米澤穂信「氷菓」

氷菓 (日本文学)
氷菓 (日本文学)
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米澤 穂信
角川書店(角川グループパブリッシング)
売り上げランキング: 3096

内容(「BOOK」データベースより)
いつのまにか密室になった教室。毎週必ず借り出される本。あるはずの文集をないと言い張る少年。そして『氷菓』という題名の文集に秘められた三十三年前の真実―。何事にも積極的には関わろうとしない“省エネ”少年・折木奉太郎は、なりゆきで入部した古典部の仲間に依頼され、日常に潜む不思議な謎を次々と解き明かしていくことに。さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリ登場!第五回角川学園小説大賞奨励賞受賞。


駄洒落!!
キャラ小説としては満点に近い。青春小説としては不完全燃焼。
米澤作品をミステリとして読むと舞城作品と同じ感じがする。ミステリじゃないが筒井康隆の短編も同様の印象。
読者への挑戦状が見えないというと伝わるだろうか。
たいていのミステリにはそれらしきものが暗示されているが、このシリーズにはそれが見えない。
したがって謎解きのカタルシスは期待できない。

麻耶雄嵩「螢」

螢 (幻冬舎文庫)
螢 (幻冬舎文庫)
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麻耶 雄嵩
幻冬舎
売り上げランキング: 99629

内容(「BOOK」データベースより)
オカルトスポット探険サークルの学生六人は京都山間部の黒いレンガ屋敷ファイアフライ館に肝試しに来た。ここは十年前、作曲家の加賀螢司が演奏家六人を殺した場所だ。そして半年前、一人の女子メンバーが未逮捕の殺人鬼ジョージに惨殺されている。そんな中での四日間の合宿。ふざけ合う仲間たち。嵐の山荘での第一の殺人は、すぐに起こった。


完全にやられた!
違和感の向こう側に予想だにしない真実があった。
頭の中を整理するのに少し時間が必要だった。
捻りすぎである。
もはやこれくらいやってくれないと驚けないのだからやってられない。

麻耶雄嵩「名探偵 木更津悠也」

名探偵 木更津悠也 (光文社文庫)
麻耶 雄嵩
光文社
売り上げランキング: 70862

出版社/著者からの内容紹介
京都某所の古めかしい洋館・戸梶邸で、資産家が刺殺された…。
柵もあってしぶしぶ依頼を引き受けた名探偵・木更津悠也を待ち受けていたのは、ひと癖もふた癖もある関係者たちの鉄壁のアリバイ。四角く切り取られた犯行現場のカーテンが意味するものは? 一同を集めて事件の真相を看破しようとする木更津だが…。(「白幽霊」)
京都の街に出没する白い幽霊に導かれるように事件は起こる。
本格推理の極北4編。名探偵・木更津悠也の活躍を、とくにご堪能あれ。


こういう世界観だったのかと意外な気がした。
何らかの大仕掛けがあるような気もするのは考えすぎか。
感想は、名探偵が迷探偵にされてしまう悲哀、かな。

麻耶雄嵩「木製の王子」

木製の王子 (講談社文庫)
麻耶 雄嵩
講談社
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内容(「BOOK」データベースより)
比叡山の麓に隠棲する白樫家で殺人事件が起きた。被害者は一族の若嫁・晃佳。犯人は生首をピアノの上に飾り、一族の証である指環を持ち去っていた。京都の出版社に勤める如月烏有の同僚・安城則定が所持する同じデザインの指輪との関係は?容疑者全員に分単位の緻密なアリバイが存在する傑作ミステリー。


かつてこれほどまでに隙のないアリバイトリックがあっただろうか?
いや、知らないけれど。アリバイ崩しはあまり好きじゃないから。
核にあるのは冗談みたいな一発芸。
このトリックがミステリ的にどうかという話はさておき、私は本格ミステリの持つ不自然さに対する解答だと感じた。
密室トリックや叙述トリックはとにかく解決篇を読めばすっきりするのだけれど、論理の積み重ねによって犯人を特定するようなミステリを読んでいたら、納得できないことがよくある。探偵役が100%でないことを断言するからだ。そこでは蓋然性という言葉が幅を利かせている。その胡散臭さたるや、「自称タレント」とどっこいどっこいである。
現実において、結果から原因を推測することは、原因から結果を予測することより遥かに難しい。そこに人間心理が絡めばなおさらだ。
だから名探偵も悩むのだ。
では、どうするのかというと、関係者から個性を取っ払う。不確実性を取り除くといったほうが適当かもしれない。
登場人物全てがプリミティブな人工知能のミステリを想像してほしい。複雑に絡み合った方程式の答えはいつも一つだ。そこに揺らぎは存在し得ない。
問題はそれ自体が非現実的だということだが、この問題を解消した一つの形が、ここにある。

麻耶雄嵩「鴉」

鴉 (幻冬舎文庫)
鴉 (幻冬舎文庫)
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麻耶 雄嵩
幻冬舎
売り上げランキング: 14200

内容(「BOOK」データベースより)
弟・襾鈴の失踪と死の謎を追って地図にない異郷の村に潜入した兄・珂允。襲いかかる鴉の大群。四つの祭りと薪能。蔵の奥の人形。錬金術。嫉妬と憎悪と偽善。五行思想。足跡なき連続殺害現場。盲点衝く大トリック。支配者・大鏡の正体。再び襲う鴉。そしてメルカトル鮎が導く逆転と驚愕の大結末。一九九七年のNo.1ミステリに輝く神話的最高傑作。


全体に漂う雰囲気は非常によい。
巧緻なプロットから生み出されるアクロバティックな真相もすばらしい。
残念なのは、お話的にどうも面白くない点だ。
銘探偵が暴れだすまで我慢できるかどうかが分かれ目。
そこから先は期待以上のものを見せてくれる。

麻耶雄嵩「あいにくの雨で」

あいにくの雨で (講談社文庫)
麻耶 雄嵩
講談社
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内容(「BOOK」データベースより)
雪に囲まれた廃墟の塔で密室殺人が発生した。現場には塔へ向かう足跡が一筋だけ。殺されたのは発見者の一人、祐今の父だった。かつて同じ密室状態のこの塔で祐今の母が殺され、容疑者として逃亡中だった。事件が解決せぬままに呪われた塔では三度目の殺人が。新本格ミステリ第二世代の旗手が密室を変えた。


いきなり解決篇から始まるというトリッキーな構成。
だからといってそこに大きな仕掛けがあるわけでもなく、内容自体は正統なミステリ。
銘探偵が登場しないだけでこんなにも違うのかと本筋とまったく関係ないところで驚いた。

麻耶雄嵩「痾」

痾 (講談社文庫)
痾 (講談社文庫)
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麻耶 雄嵩
講談社
売り上げランキング: 63421

内容(「BOOK」データベースより)
忌まわしい和音島の殺人事件の後遺症で記憶喪失になった如月烏有は、記憶をとり戻そうと寺社に連続放火。すると焼け跡からは焼死体が発見される。その彼のもとに「今度は何処に火をつけるつもりかい?」と書かれた手紙が届く。烏有は連続放火殺人犯なのか?名探偵メルカトル鮎が真相に迫る新本格ミステリ。


「夏と冬の奏鳴曲」の衝撃が強すぎたせいで、その後日談的なこちらはどうしても印象が薄い。
それでもまあ、わかりやすいといえばわかりやすいし、それなりにスッキリはできるので、口直しに読むのもよいかもしれない。

麻耶雄嵩「夏と冬の奏鳴曲」

夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫)
麻耶 雄嵩
講談社
売り上げランキング: 73646

出版社/著者からの内容紹介
首なし死体が発見されたのは、雪が降り積もった夏の朝だった!20年前に死んだはずの美少女、和音(かずね)の影がすべてを支配する不思議な和音島。なにもかもがミステリアスな孤島で起きた惨劇の真相とは?メルカトル鮎の一言がすべてを解決する。新本格長編ミステリーの世界に、またひとつ驚愕の名作が誕生!


真相を知ったときの感動をどう表現すればよいのだろう?
筆舌に尽くしがたいので、読後の思考をざっと表すと、
「おいおい、マジかよ・・・・・・いや、ちょっと待て。冷静に考えろ。明らかにおかしいぞ。辻褄が合わないじゃないか!・・・・・・!まさか!え?いや、そんなはずは・・・・・・でも、もしそうだとすると、あれもこれもそれも!!ふぅ・・・・・・そういうことだったのか。完全にやられたよ・・・・・・・・・・・・いや、そうじゃない。そんなことはありえない・・・・・・いや、やっぱり違う。さっきの考えでおおむね正しいはずだ。だから問題は、一体誰の意思が働いていたのか?・・・・・・」
と、だいたいこんな感じ。
だから厳密な意味での真相はいまだに理解できていない。というより確信が得られなかったというべきか。
私なりの解答はあるのだが、たぶんここから先は解釈の問題だ。

まあ、とにかく、凄まじい小説だった。

麻耶雄嵩「翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件」

翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 (講談社文庫)
麻耶 雄嵩
講談社
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出版社/著者からの内容紹介
首なし死体、密室、蘇る死者、見立て殺人……。京都近郊に建つヨーロッパ中世の古城と見粉うばかりの館・蒼鴉城を「私」が訪れた時、惨劇はすでに始まっていた。2人の名探偵の火花散る対決の行方は。そして迎える壮絶な結末。島田荘司、綾辻行人、法月綸太郎、三氏の圧倒的賛辞を受けた著者のデビュー作。


なんかもういろいろとすごい。
本格ミステリっぽいけど、何かが決定的に違う。だからといって本格じゃないとも言い切れない。
ミステリの枠に収まりきらないものを無理矢理押し込めた感じ。
中毒症状を呈するか、拒否反応を示すかのいずれかに分かれるだろうな。
とりあえず、私ははまってしまったので、おすすめ。

殊能将之「キマイラの新しい城」

キマイラの新しい城 (講談社文庫)
殊能 将之
講談社
売り上げランキング: 44201

内容(「BOOK」データベースより)
「わが死の謎を解ける魔術師を呼べ」フランスの古城を移築後、中世の騎士として振舞い始めた江里。750年前の死の真相を探れ、という彼の奇想天外な依頼で古城を訪れた石動戯作は、殺人事件に遭遇する。嫌疑をかけられた江里が向かった先は…。ミステリの枠に留まらない知的エンタテインメントの傑作。


笑った。
たぶん激怒する人もいるだろう。
きっとここがフェアとアンフェアの境界なのだ。
「黒い仏」よりひどいけれど、非現実的ではない。
まあ、何にしろ、楽しんだ者勝ちである。

殊能将之「鏡の中は日曜日」

鏡の中は日曜日 (講談社文庫)
殊能 将之
講談社
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内容(「BOOK」データベースより)
梵貝荘と呼ばれる法螺貝様の異形の館。マラルメを研究する館の主・瑞門龍司郎が主催する「火曜会」の夜、奇妙な殺人事件が発生する。事件は、名探偵の活躍により解決するが、年を経た後、再調査が現代の名探偵・石動戯作に持ち込まれる。時間を超え交錯する謎。まさに完璧な本格ミステリ。続編「樒/榁」を同時収録。


非常に新本格らしいミステリだ。
ミステリとしてできることは全部やってしまったのではないかとさえ思える。
短編でネタを一つ一つ消化するのは簡単だが、これはそれらの合わせ技で一つの物語になっているところがすばらしい。
近年の話題作をそこそこ読んだくらいの、自称中級者におすすめかな。

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