三津田信三「スラッシャー 廃園の殺人」

スラッシャー 廃園の殺人 (講談社文庫)
三津田 信三
講談社 (2012-09-14)
売り上げランキング: 148897

内容(「BOOK」データベースより)
異形のホラー作家が巨額の費用をかけ、造りあげた廃墟庭園。そこでは行方不明者が続出し、遺体で発見される者も出て、遂に作家自身まで姿を消す。その場所、“魔庭”を訪れた映画関係者たちに想像を絶する恐怖と怪異が襲いかかる。殺戮を繰り返す黒怪人とは何者なのか?“庭”が“館”が襲いくるホラーミステリ。


設定や台詞回し、文体から溢れ出るB級臭。こういうチープさは好きだ。
ホラー・ミステリ。まあ、いつもの三津田作品。
ホラー映画に関する知見を持ち合わせていないので、その観点からは評価できない。ホラー小説の怖さが理解できないのはいつものこと。
ミステリ的には失敗作だと思う。種が明かされるまで全く気づけなかったのだが、真相は予想の範疇で、しかも重ねられたメタ設定が状況の理解を妨げ、世界がひっくり返る衝撃を弱めているように感じた。ミステリとして読んでいなかったので一切推理をしなかったことも影響しているのかもしれない。
血みどろスプラッターに嫌悪感はないのだが、皮膚を剥ぐ場面は非常に気持ちが悪かった。何かトラウマでもあるのかな。
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法月綸太郎「ふたたび赤い悪夢」

ふたたび赤い悪夢 (講談社文庫)
法月 綸太郎
講談社
売り上げランキング: 239240

内容(「BOOK」データベースより)
法月綸太郎のもとに深夜かかってきた電話。救いを求めてきたのはあのアイドル歌手畠中有里奈だった。ラジオ局の一室で刺されたはずの自分は無傷で、刺した男が死体で発見される。恐怖と混乱に溢れた悪夢の一夜に耐えきれず、法月父子に助けを願い出た。百鬼夜行のアイドル業界で“少女に何が起こったか”。


ということで、早速読んでみた。
最初に感じたのは読みやすさだった。読み終えたばかりの「二の悲劇」とは比べ物にならない。結局600ページを超える分量が全く気にならなかった。文体に大きな違いは見受けられない。だから字の大きさとそれに伴うレイアウトが読みやすさの原因だと思われる。だがこれでも最新の講談社文庫よりまだ小さいのである。そのサイズに慣れてしまっているから、小さな文字が読みにくかったのだ、と相対的な結論にしておく。
読む順番を間違えたせいで、物語の結末が私にとって予定調和になってしまい、スリルもサスペンスもなかった。
それで肝心の内容だが、驚くべきはたった1件の殺人事件しか起きていないことである。厳密には他に二人死んでいるのだが、それは過去の話で考えるべき謎は終盤まで明示されない。
普通の本格ミステリであれば、連続殺人事件が起きるべき長さだ。その上、読者の視点から見ると殺人事件そのものはなかなかに陳腐なトリックで、フーダニットはおまけのような扱いである。多くの部分を、芸能界の謀略と探偵の苦悩が占めている。
本格のガジェットは控えめに、しかし本格のコードに則って書かれている。
家族とか人間関係とか秘密とか、やっぱり名探偵が登場するハードボイルド小説なのだ。
「頼子のために」が強く影響を及ぼしているのだが、かなり前に読んだので内容はうろ覚えで、どうにもすっきりしない。
まあ普通に面白かった。

法月綸太郎「二の悲劇」

二の悲劇 (ノン・ポシェット)
法月 綸太郎
祥伝社
売り上げランキング: 256636

内容(「BOOK」データベースより)
都内のマンションでOL殺される。死者の胃から現われたメッセージ。小さな鍵が秘めた謎とは!?探偵法月綸太郎が出馬した矢先、容疑者は京都で死体となって発見、そして鍵の正体が明らかになるにつれ、名探偵を翻弄する迷宮の扉が開いた…。


読む順番を間違えたな。やはり発表順に「ふたたび赤い悪夢」を先に読むべきだった。
さて、近頃口癖のようになってしまったが、これもまた長い。
まず序盤から意図の読めない二人称の文体に読む気をそがれた。続いてよくわからない探偵の苦悩が語られ、そしてあの日記だ。いくらなんでも長すぎるだろう。長いからには面白くなければならないのに面白くないのだ。
個人的なハイライトは第4部の終わり、ある事実が明かされた場面だ。世界は反転したのに、事件は解決どころかさらに混迷の度合いを深めるという珍しい構成。謎の解明までそれ以上の驚きを得られなかったことが残念。
などと書いていると文句しか浮かんでこないのだが、これがどうしたことか、結局面白かったのだから不思議だ。
祥伝社文庫の初版で読んだのだが、異常なまでに読みづらかった。文字が小さく詰め込まれているせいだ。いつまでたってもページをめくれないので話が停滞するような感覚に付きまとわれる。古い本はほとんど読まないので、久々の感覚で余計に気持ち悪かった。大きな文字で読めていたらもっと面白かったに違いない。
しかし吉本ばぎなってもはや悪意を感じるネーミングだな。

三津田信三「密室の如き籠るもの」

密室の如き籠るもの (講談社文庫)
三津田 信三
講談社 (2012-05-15)
売り上げランキング: 273060

内容(「BOOK」データベースより)
旧家の猪丸家に現れた記憶のない謎の女・葦子は、開かずの間だった蔵座敷で“狐狗狸さん”を始める。だが、そこは当主・岩男の前妻たちが死んだ場所だった。刀城言耶が訪れた日も“狐狗狸さん”が行われるが、密室と化した蔵座敷の中で血の惨劇が起こる。表題作他、全四編を収録した“刀城言耶”シリーズ第一短編集。


「首切の如き裂くもの」犯人当てだとしたらアンフェアかもしれない。謎解きならありだ。
「迷家の如き動くもの」不可思議な家屋の出現と消失の謎。短編であるがゆえに不要な情報はほぼないと考えられるので、そうするとそれぞれの情報を結びつけることは容易。だが、そうして出来上がった仮説を論理的に証明することは難しい。
「隙魔の如き覗くもの」バカミスだった。しかしこれほど論理的にやられると、ぐうの音も出ない。
「密室の如き籠るもの」この長さはもう長編だ。密室講義はすっきりしていてわかりやすい。偽の解答の存在がミステリのバランスを崩している。また、フィニッシュブロウがあるのだが、世界を反転させるほどの威力がない。謎と真相を一直線に結ぶプロットであれば、その意外性がより増したのではないか。いくらでも深読みできることが悪い方向へ働いてしまっている。

牧薩次「完全恋愛」

完全恋愛 (小学館文庫)
牧 薩次
小学館 (2011-03-04)
売り上げランキング: 272506

内容紹介
他者にその存在さえ知られない罪を完全犯罪と呼ぶ。では、他者にその存在さえ知られない恋は完全恋愛と呼ばれるべきか?
*
推理作家協会賞受賞の「トリックの名手」T・Mがあえて別名義で書き下した
究極の恋愛小説+本格ミステリ1000枚。
舞台は第二次大戦の末期、昭和20年。福島の温泉地で幕が開く。主人公は東京から疎開してきた中学二年の少年・本庄究(のちに日本を代表する画家となる)。この村で第一の殺人が起こる(被害者は駐留軍のアメリカ兵)。凶器が消えるという不可能犯罪。
そして第二章は、昭和43年。福島の山村にあるはずのナイフが時空を超えて沖縄・西表島にいる女性の胸に突き刺さる、という大トリックが現実となる。
そして第三章。ここでは東京にいるはずの犯人が同時に福島にも出現する、という究極のアリバイ工作。
平成19年、最後に名探偵が登場する。
全ての謎を結ぶのは究が生涯愛し続けた「小仏朋音」という女性だった。


上手いな。よくできている。
だがそれゆえに「おわりに」で明かされる真実がかなり早い段階で読めてしまった。私にしては珍しくすべての伏線を拾った上で。
驚けなかったことだけが残念だ。

構造的には連作中編集に近い。それぞれの時代で起きた3つの事件が名探偵の登場を待たず謎解きされるので、私は推理するタイミングを失ったし、邪推に囚われることになった。
トリック的には最初の事件は古典的でスマート。2番目の事件はありふれた逆転の発送を否定するための伏線とそれをひっくり返すための伏線が見事。最後の事件はダメダメだが、全体像としてみた場合に意外性抜群。

振り返ってみると語られてないことが多々あるように思うのだが、大筋には影響しないのでまあいいか。

読後、エピグラフの意味が変わってしまったことには驚いた。
そして最後のツンデレに笑ってしまった。

貴志祐介「新世界より 下」

新世界より(下) (講談社文庫)
貴志 祐介
講談社 (2011-01-14)
売り上げランキング: 172

内容説明
夏祭りの夜に起きた大殺戮。悲鳴と嗚咽に包まれた町を後にして、選ばれし者は目的の地へと急ぐ。それが何よりも残酷であろうとも、真実に近付くために。流血で塗り固められた大地の上でもなお、人類は生き抜かなければならない。構想30年、想像力の限りを尽くして描かれた五感と魂を揺さぶる記念碑的大傑作! PLAYBOYミステリー大賞2008年 第1位、ベストSF2008(国内篇) (講談社文庫)


なんというか、長いんだな。
ダイジェスト版とか、2時間ちょっとの映画になったりしたら、文句なしの面白さだろう。
伏線は十分に張ってあるのに、何故かドラマ性が薄い。
淡々としているという意味では高評価にもなりうるのだろうが、それにしては長いのだ。
結局、長いの一言に尽きるようだ。
尻すぼみではなかっただけでよしとすべきだ。

貴志祐介「新世界より 中」

新世界より(中) (講談社文庫)
貴志 祐介
講談社 (2011-01-14)
売り上げランキング: 491

内容説明
町の外に出てはならない――禁を犯した子どもたちに倫理委員会の手が伸びる。記憶を操り、危険な兆候を見せた子どもを排除することで実現した見せかけの安定。外界で繁栄するグロテスクな生物の正体と、空恐ろしい伝説の真意が明らかにされるとき、「神の力」が孕(はら)む底なしの暗黒が暴れ狂いだそうとしていた。(講談社文庫)


バケネズミがきな臭い。
人類総AKIRA化。
SEX。

「アバタールチューナー」を読んだばかりなので、類似点が目についた。

この感じどこかで読んだことがあると思っていたけれど、やっと思い出した。新しい太陽の書に似ているのだ。

所々でバッドエンドがほのめかされているが、それは一体どちらから訪れるのだろう? 社会の内か外か、あるいは両方か。

SFをあまり読まないからよくわからないが、現実より文明レベルの低い管理社会は珍しいと思った。この歪過ぎる形には原因があるのだろうか?

諸星大二郎「稗田のモノ語り 魔障ヶ岳 妖怪ハンター」


出版社 / 著者からの内容紹介
新章突入!妖怪ハンターシリーズ!!
魔障ヶ岳の山中にあるという古代の祭祀遺跡「天狗の秘所」を調査に訪れた稗田礼二郎らが出会ったものとは……? 以降、調査に同行していた学者や山伏の身辺に異変が次々と起こる。"御神宝"「天狗の宝器」とはなんなのか?妖怪ハンター稗田礼二郎がすべての謎を明らかにする!


普通の妖怪ハンター。
終盤の盛り上がりはなかなかのものだが、きっとそれは岩田狂天のキャラクターによるものなので、物語としての感動は得られなかった。
実在するのかしないのかわからない資料からの引用とか、得体のしれない何かの存在とかはいつもと同じで、期待通りではある。
普通に楽しめた。

貴志祐介「新世界より 上」

新世界より(上) (講談社文庫)
貴志 祐介
講談社 (2011-01-14)
売り上げランキング: 305

内容説明
1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖(かみす)66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。周囲を注連縄(しめなわ)で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。「神の力(念動力)」を得るに至った人類が手にした平和。念動力(サイコキネシス)の技を磨く子どもたちは野心と希望に燃えていた……隠された先史文明の一端を知るまでは。 (講談社文庫)


「新世界より」と言えば誰もが一度は耳にしたことがあるドヴォルザークの交響曲第9番がまっさきに思い浮かぶ。それが関係あるのかないのかわからないが。
面白くなるまで200ページもかかった。全体の割合からは導入として妥当なのかもしれないが、いかんせん長い。ひぐらしスタイルだ。
世界の秘密は上巻の時点でほぼ明かされた感があり、この先さらなる驚愕の真実があるとは思えない。一方で渡辺早季の手記という形式だから、アクロイドみたいな騙りがあるかもしれない。こういう勘繰りをするから楽しめないのだ。
どうでもいいけど稲川淳二全否定に笑わされた。

アニメ第1話を見たけれど小説を読んでないとさっぱりわからないだろうなというのが感想。

「新世界より」 一 [Blu-ray]
ポニーキャニオン (2012-11-30)
売り上げランキング: 2407

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