うえお久光「紫色のクオリア」

紫色のクオリア (電撃文庫)
うえお 久光
アスキーメディアワークス
売り上げランキング: 12,583

内容(「BOOK」データベースより)
自分以外の人間が“ロボット”に見えるという紫色の瞳を持った中学生・毬井ゆかり。クラスでは天然系(?)少女としてマスコット的扱いを受けるゆかりだが、しかし彼女の周囲では、確かに奇妙な出来事が起こっている…ような?イラストは『JINKI』シリーズの綱島志朗が担当。「電撃文庫MAGAZINE増刊」で好評を博したコラボレーション小説が、書き下ろしを加え待望の文庫化!巻末には描き下ろし四コマのほか、設定資料も収録。


面白かった。評判通りだ。
長めの短編と中編にエピローグという構成で、最初の短編の時点では、少し不思議という意味のSFだったのが、続く中編になると設定を掘り下げてそこに科学的な解釈を加え、量子SFとでもいうべき小説になっている。
私の少ない読書経験の中でも量子論を扱った小説はいくつも読んだことがあるが、ここまで徹底的なのは初めてだ。
量子力学、不確定性原理、シュレディンガーの猫、コペンハーゲン解釈、多世界解釈、フェルマーの原理、人間原理などなど、キーワードは挙げればきりがないが、こういった少しでもSFを齧ったことがある人なら見たことのある言葉が次々に出てきて、しかも物語は筋立てと小道具が逆転したような印象さえ与えるもので、常識からかけ離れてナンセンス極まりなく、とにかくややこしい。
このややこしさはおそらく視点によるものなのだろうが、特別難解というわけでもないし、他の視点では成立しないように思えるので、最適なのだろう。
結末について、これだけめちゃくちゃにやったのに、最終的に日常へ回帰する。物足りない気もするが、私が伊藤計劃の次作に期待したのはこれではなかっただろうか。絶望→すったもんだ→原状回復→希望。まだ読んでいない「屍者の帝国」が楽しみだ。
連想したもの:「バタフライ・エフェクト」「エイダ」「アルジャーノンに花束を」もっとあるけどとりあえずこれだけ。

バタフライ・エフェクト プレミアム・エディション [DVD]
ジェネオン エンタテインメント (2005-10-21)
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エイダ (ハヤカワ文庫 JA (599))
山田 正紀
早川書房
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アルジャーノンに花束を
ダニエル キイス
早川書房
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屍者の帝国
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伊藤 計劃 円城 塔
河出書房新社
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小川一水「青い星まで飛んでいけ」

青い星まで飛んでいけ (ハヤカワ文庫JA)
小川 一水
早川書房
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内容紹介
それは人間の普遍的な願い。

彗星都市での生活に閉塞感を抱く少女と、緩衝林を守る不思議な少年の交流を描く「都市彗星のサエ」から、
“祈りの力で育つ”という触れ込みで流行した謎の植物をめぐる、彼と彼女のひと冬の物語「グラスハートが割れないように」、
人類から“未知の探求”という使命を与えられたAI宇宙船エクスの遙かな旅路を追う表題作まで、
様々な時代における未知なるものとの出逢いを綴った全6篇を収録


「都市彗星のサエ」青春だな。
「グラスハートが割れないように」いい話かな。既読だが完全に忘却していた。
「静寂に満ちていく潮」これが異文化交流だ!
「占職術師の希望」なんだか引きこまれた。
「守るべき肌」好みだ。
「青い星まで飛んでいけ」面白かった。途中から展開が予測できるなと思っていたらこれも既読だった。
解説は半分くらい理解できなかった。わかる人にはわかるのだろう。

久住四季「七花、時跳び!」

七花、時跳び!―Time‐Travel at the After School (電撃文庫)
久住 四季
アスキーメディアワークス
売り上げランキング: 423,103

内容(「BOOK」データベースより)
そもそもの発端は、だ。我が後輩の七花いわく、突然タイムトラベラーになったという。可愛い顔して、あなたマジですか!?と言いたいところだが、これがマジだったりするのだ。過去や未来に自由に跳べるとしたら、どうする?カップメンにお湯を注いで『三分後』に跳んで待たずに食べるとか―え?違う?こんな面白いことはないと、退屈しのぎに彼女と始めた時間旅行は―まぁしょうもないことばかりで。予告しておく。びっくりしたり呆れたりすることはあっても、歴史を動かすような展開は何にもない。なぜなら、僕が主人公だからだ。


今度はすっかり量産型ラノベだ。宇宙世紀ネタ多め。気楽に読めて良い。
タイトルからわかる通りタイムリープもの。主人公のテンションが高いので面食らった。形式的には連作短編集。以下ネタバレ込みのあらすじ。といっても驚愕の結末はないんだけど。

第一話でヒロインが時間移動できることが判明し、いたずらを通して伏線を回収。第二話で失くしたエロDVDを求めて過去へ向かい、そこでタイムパラドックスに直面し、過去改変の可能性を考える。第三話でそれが否定され、さらには未来まで決まっていると知り、意欲を失うが、第四話で自由意志の否定を否定する。

肝はきっと第四話だな。決定論的時間の中であっても自由意志は存在しうるということだ。とはいっても普通は時間移動なんてできないので、そんなのは当たり前だけど。しかし、悲劇であっても同じことがいえるのか、と考えるとなかなか深いのではないか。

これで著者の作品で出版されたものは全て読んだ。3年の沈黙が意味するものは何なのか。

久住四季「鷲見ヶ原うぐいすの論証」

鷲見ヶ原うぐいすの論証 (電撃文庫)
久住 四季
アスキーメディアワークス
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内容(「BOOK」データベースより)
うぐいすという少女は変わり者である。いつも図書室にこもっていて、教室に顔を出すことはない。だが、試験では常に満点というひねくれぶり。なぜか譲はそんな彼女と奇妙な付き合いが続いていた。変わり者には変わった依頼が来る。天才数学者、霧生賽馬は魔術師である―その真否を問い質してほしいというのだ。かくしてうぐいすと譲は霧生博士が待つ麒麟館へ。だが翌日、霧生は首なしの死体となっていた。限られた容疑者は全員が無実という奇妙な状況に陥り!?魔術師であるのか、殺人なのか、被害者はいるのか、犯人はいるのか、これはそれらすべてを「論証」する物語である。


この狙いすましたような設定は「講談社ノベルスでやれ」と言いたくなった。
登場人物的にはトリックスターズ番外編。比べてみるとこっちのほうがわかりやすい。
そんな感じで個人的には好みに合っていて楽しめたのだが、だから当然既視感も強い。
たぶん「クビキリサイクル」に似ているのだ。
ハイライトは序盤の神の沈黙と悪魔の存在を証明してみせる場面。
犯人との対決から始まる構成は「絡新婦の理」を思い出した。なかなか上手く決まっているのではないか。

久住四季「ミステリクロノⅢ」

ミステリクロノ〈3〉 (電撃文庫)
久住 四季
アスキーメディアワークス
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内容(「BOOK」データベースより)
天使だって家出ぐらいする―。突然冷淡になった慧に、真里亜は疎外感を覚える。明日も続くものと思っていた毎日。それが幻想にすぎないことを改めて認識した真里亜は遙海家を出て行くのだった。真里亜を追うことに逡巡する慧。だが事態は急変する。資産家である小布院の身内と勘違いされた真里亜が誘拐されてしまったのだ。しかもその身には恐るべきクロノグラフ“リグレスト”が取り付けられていた。リグレストの効果により、真里亜は凄まじい速さで幼児化していく。行き着くところは肉体の消滅―。救出とリグレストの解除。その難事を慧は同時に解決しようとするのだが。


今度は誘拐犯との対決がメインで、クロノグラフに関わる謎はサブだった。
面白くなくはないんだけど、期待していたのとは違った。
いきなりクライマックスから始まってバッドエンドを見せてからのイントロというのは仕掛けのにおいがプンプンするが、それが炸裂する頃には冒頭を忘れていて不発だった。
「εに誓って」を思い出した。
そんなことより、続きが出てないみたいなんだけど、これで終わりってことはないよね?
まだクロノグラフは残ってるし、他の伏線も未回収だ。
奥付を見たら五年も経ってるよ。

久住四季「ミステリクロノⅡ」

ミステリクロノ〈2〉 (電撃文庫)
久住 四季
メディアワークス
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内容(「BOOK」データベースより)
そいつが持っていたのは奇妙な拳銃だった。撃たれた者の記憶を消失させる、それ。神の力を手に入れた時、人はどうするだろうか?そいつは―。慧たちの同級生に奇妙な状況に置かれ困っている者がいた。嘘のような話だがすっぽりと半年分の記憶だけが頭の中から抜け落ちているのだ。それがクロノグラフによる人為的な記憶操作だと疑った慧は調査に乗り出す。答えは消された半年間にある―。わずかに残された過去の残滓と大胆な推理で時間を辿り、記憶を再構築していく慧。そして明らかになったのは意外な事実だった。


続けて読んでみたけど、二作目はやたら出来が良いと感じた。
プロットが洗練されている。
まあ、それ故に予定調和ではあるんだけど、驚愕を求めなければこれで十分だ。

やっぱりどこかで叙述トリックを期待している自分がいる。
こればかりはもうどうしようもない。

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