無題(仮)

早坂吝「誰も僕を裁けない」

誰も僕を裁けない (講談社文庫)
早坂 吝
講談社 (2018-07-13)
売り上げランキング: 90,823

内容(「BOOK」データベースより)
援交少女にして名探偵・上木らいちの元に、「メイドとして雇いたい」という手紙が。しかし、そこは異形の館で、一家を襲う連続殺人が発生。一方、高校生の戸田公平は、深夜招かれた資産家令嬢宅で、ある理由から逮捕されてしまう。らいちは犯人を、戸田は無実を明らかにできるのか?エロミス×社会派の大傑作!


 まず歪さが良い。謎を作るためにありえないことがたくさん起きる。本格はかくあるべし、と思うが、そうなるとご都合主義と張り巡らされた伏線の境界が気になる。そういう意味では「霧越邸殺人事件」の評価を改めなければならないかもしれない。
霧越邸殺人事件<完全改訂版>(上) (角川文庫)
綾辻 行人
KADOKAWA (2014-03-25)
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 複数の叙述トリックが仕掛けられているが、ほとんど見破ってしまったので不発だった。しかしどう辻褄を合わせるのかという点で楽しめた。
 本格と社会派の融合というのは島田荘司がやっていた。「奇想、天を動かす」がひとつの完成形だと思うが、もう内容を覚えてないので再読しても良いかもしれない。
奇想、天を動かす (光文社文庫)
島田 荘司
光文社
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 本作はさらに「本格のルールが現実社会のルールをも侵食し、両者が渾然一体となる」ことを志向している。これだけでは何を言っているのかわからないが、読み終えればその意味を理解できる。しかし成功しているかどうかは微妙だ。本格のルールと現実社会のルールが衝突して、前者が勝ったところで留まっている。「渾然一体」の具体例が想像できない。
 一般的に、常識的に、直感的に、現実はフィクションに優先する。
 本格ミステリにはリアリティがないと批判される。本格ミステリの形式を保ったまま現実を取り込めばリアリティを補強できるはずだが、多くの場合失敗する。浮世離れした本格ミステリのお約束は現実と相容れない。
 刑法の講義を思い出した。AとBがそれぞれ独自に殺意を持って致死量に満たない毒をたまたま同時にCに飲ませ、結果的にCが死亡した場合、法的にどうなるのか?
 麻耶雄嵩作品では、本格のルールが物理法則を凌駕する。
 あとがきで言及されている本格ミステリ大賞受賞作は「完全恋愛」ではないか? 根拠は2つ。プロローグとエピローグが生み出す読後感が似ている。解説者が辻真先=牧薩次。
完全恋愛 (小学館文庫)
牧 薩次
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